ポジティブサイコセラピー ポジティブサイコセラピー治療マニュアルが詳細にある。自身を高めるということでは、禅をはじめとして、様々な手法が多くの先達たちに よって考案されてきた。個人的には坐禅の4回ほどの体験やNLPなどのいくつかの 心理学の体験や知識の習得、をしてきたつもりではあるが、振り返れば、その痕跡 さえ怪しい。しかし、7,8年前に知ったポジティブ心理学は、自分の特性にも あっているのか、専門の方の指導はまだ受けていないものの、以下にある サイコセラピーのいくつかを実践することにより、自身の変化を感じている。 ここで、ポジティブサイコセラピーの概説を述べることにより、少し理解をしてもらえ れば、 と思っている。もっとも、本格的な実践はいまだできず、少々頼りない話でもあるが。 なお、ポジティブサイコセラピー治療マニュアルが出ているとのことだが、邦訳は ないとのこと。できれば、その詳細に触れてみたいとの思いもあるが。 その概説 1)ポジティブなリソースの確認 日本語で800文字程度の「ポジティブな自己紹介」を描く。そのなかで、自分が最高 だった 時の物語を具体的に語り、自分の最高の強みをどのように活用したかを説明する。 2)ポジティブな自己紹介によって自分の徳性の強みを特定し、以前にどのような 状況でそれらの強みが自分の役に立ったかを話し合う。 VIAテストにより自分の徳性の強みを特定すること。 3)徳性の強みによって快、エンゲージメント、意味意義が促進される可能性のある 具体的な状況に集中的に取り組み。 「良いこと日記」を描き始める。その日記に、毎晩、その日に起きた3つの良いこと を書くこと。 4)抑うつが持続する場合の良い記憶と悪い記憶の役割について話し合う。 怒りや恨みの感情を書き出すこと。それがどのように抑うつの原因になっているかを 書き出す。 5)怒りや恨みの感情をニュートラルな感情に変える、あるいは一部のひとにとっては ポジティブ感情にも変えることのできる強力な手段として「ゆるし」の実践を 導入する。 「許しの手紙」を書いて、相手の罪やそれに関連した感情を説明し、相手を許す と誓うこと。ただし、この手紙は相手に送らない。 6)感謝について限りないありがたい気持ちとして話し合う。 今まできちんと感謝の気持ちを示したことのない人に感謝の手紙を書き、その手紙を 相手に直接届けること。 7)「良いこと日記」や強みの活用を通して、ポジティブ感情を高めることの重要性を 再確認すること。 8)最低限の条件で満足するの方(満足者)が極限まで追求しないと満足しない追及者 よりもウェルビーイング状態にあるということを話し合う。 自分の満足度を向上させる方法を再確認して、自分のための「満足計画」をつくる。 9)「説明スタイル」を用いて、楽観性や希望の実践について話し合う。 自分の前で閉まった「3つのドア(逃がしたチャンス)」について考える。 その後、どんな新しい可能性が開かれたかを考える。 10)自分の大切な人の強みを認識するように手引きされる。 ほかの人から報告されたポジティブな出来事に対して、積極的かつ建設的な反応を示す クライアントをコーチする。さらに自分の強みと、自分の大切な人の強みをたたえる 時間を持つこと。 11)家族1人1人の持つ強みをどのように発見すればよいか、またクライアント 自身の強みがどこに由来しているのかを話し合う。 家族にVIAテストを受けてもらい、家族全員の強みを含む家系図を描く。 12)ポジティブ感情の強度と持続時間を増やすテクニックとして「深く 味わってみる」エクササイズを導入する。 何か新しい活動を計画してそれを計画通りに実行する。 13)あらゆるものの中で最高の贈り物の1つである「時間の贈り物」を することが出来る。 自分の強みが求められることを実行して「時間の贈り物」をする。 14)快、エンゲージメント、意味意義を統合する十全な人生について話し合う。 独自の強みを活かして、積極的ー建設的な反応し続けるかを考えるというエクササイズ もある。 反応の4つのパターン 1)積極的ー建設的 誠意と熱意をもってサポートする。 私の家内が最高の職を見つけたといってきた。に対して、 「それはよかった。新しい仕事ってどんなの?奥さんはいつから働き始めるの? どうやってその職を得たの? 2)受動的ー建設的 控えめのサポートをする 「へえ、そうなの」 3)受動的ー破壊的 出来事をサポートする 息子から変なメールが届いたんだけど、ちょっと見てよ」 4)積極的ー破壊的 出来事のネガティブな側面を指摘する。 「そうすると誰が息子の面倒を見るの?ベビーシッターは信用できないよ。 虐待するとかの話も多いしね」。 その対応には、 好奇心の強みを使っていろいろと質問する。 「熱意」の強みを活かして積極的に反応する。 「知恵」の強みを用いて学ぶべき価値ある教訓を指摘する。 など 受動的なスタイルでは、「どうせあなたは私の話を聞いてくれないでしょう」 というメッセージが発信される。 双方が理解しあえる会話となるには、以下の5つの段階を考えていく。 1)状況を特定し、状況を理解する 2)客観的かつ正確に状況を説明する。 3)気になることを言ってみる。 4)ほかの人の考え方に耳を傾け、好ましい変化に向けて努力する。 5)変化が起きた時に伴う利点を書き上げてみる。 詳細はマーティン・セリグマン著「ポジティブ心理学の挑戦」にある。 さらに「幸せではない」要素の研究も進んできている。 それには、 ・個人的な欲求がすべて満たされること ・人生に対して常に満足感を抱くこと ・いつも喜びを感じていること ・ネガティブな感情を一切持たないこと 以上のように、我々の持つ幸せの定義は、ほんのちょっとずれていたのかもしれない。 同大学の科学研究センターが研究を重ねて発見したのは、真の幸せとは心の平静より 大きな「良いこと」に目を向けること。幸せとは、欲求を満たし、いつも「良い気分」 でいたり、人生のあらゆる面に満足したりすることではない。 マーティン・セリグマン著「ポジティブ心理学の挑戦」では、さらにポジティブヘルス についても調査している。 この本では、多くの実践的な試みとその手法の開発により、健康面での大きな 成果が示されている。 その定義とは、 ①主観的資産 楽観性、希望、健康の感覚、熱意、活力、人生の満足度 ②生物学的資産 心拍変動の上限、ホルモン、低濃度のインターロイキン、テロメアなど ③機能的資産 すばらしい結婚生活、歳以上の体力、豊かな人間関係、充実したライフワークなど その成果より ・心血管の健康資産 この疾患(例えば、心臓発作)に対する抵抗力を平均以上に高める主観的、 生物学的、機能的な資産は存在するのか? →結論的には、楽観性が心血管疾患から保護する事に強く関係している。 ・風邪等の感染症対応 ポジティブ感情の高い人は、平均的なポジティブ感情を持つ人よりも風邪に 罹りにくい。重要なのはネガティブ感情の大きさよりもポジティブ感情の 強さにより抵抗力は大きくなる。 以上などからここでは、ウェルビーイングの因果関係と身体への影響について 以下のように考えている。 ①楽観性は心血管の健康に、悲観性は心血管の危険性に強く関係している。 ②ポジティブな気分は、風邪やインフルエンザの予防に、またネガティブな 気分は風邪やインフルエンザに対するより大きな危険性に関係している。 ③非常に楽観的な人はがんになる危険性が低い可能性がある。 ④健康な人で、良好な心理的ウェルビーイングにある人は、全死因死亡に 対する危険性が少ない。 その要因は、 ①楽観主義者は行動的であり、健康的なライフスタイルを実践している。 すなわち、食事に気をつけ、喫煙せず、定期的に運動する傾向がある。 ②社会的な支援が多い。 人生で友人と愛情に多く恵まれている人は病気になりにくい。 ③生物学的メカニズムが高い。 脅威に対する免疫力が高い。また、度重なるストレスにより上手く対処できるが、 悲観主義者はそのストレスに一層苦しむ様になる。 また、国レベルでの調査では、 ・人生の満足度は国民一人あたりのGDPが高い国ほど高くなっている。 P399の表がそれを明瞭に示している。 しかし、金をたくさん儲けることにより直ぐに人生の満足度において 収穫逓減の点に達する。これを対数表で見ると終点のない上向きの直線 となり、国が公共政策として幸福の増大を目的とすると更なる富を生み 出さないと幸福は得られない事にもなる。 この調査で重要なのは、「あなたはどれくらい幸せですか?」ではなく、 「あなたは自分の人生にどれくらい満足しているか?」である。 この点でみると、最も裕福なアメリカ人の幸福度は平均的な原住民の 幸福度と大きな差異はない。 正法眼蔵とはかなり似た考えがあると個人的には思っている。 日常での行いに修行があり、覚りがある、「行、住、座、臥」という普段の 人間の行動すべてが修行である、という基本となる考えは、ポジティブ心理学と変わら ない。 だが、正法眼蔵の弁道話にある、 「仏法を正しく伝える宗門では、仏法が各々の資質のままに実現する誤りのない 座禅修行こそ、最上の中の最上であるとして、修行者が初めて師に参じたとき から、焼香、礼拝、念仏、修懺、看経を用いず、ただひたすら打坐して心身 脱落することを得よと教えるのである」が、この「只管打坐」の4文字を 具体的な形にしていくには、中々に難しいと思う。先ほどの14の行動のような 具体的な処方があると、素人にも対応ができるのだが、単に「只管打坐」を しなさいと言われても、多くの衆生は悩むだけではないのだろうか。 |
2016年7月23日土曜日
ポジティブサイコセラピー
ウェルビーイング
セリグマンの「ポジティブ心理学の挑戦」より」、 彼は従来の幸せの定義からさらに進め、ウェルビーイングを獲得することが 重要と述べている。 1.ウェルビーイング 主観的ウェルビーイングの構成とは、幸福感(気分)と人生の満足度(評価) からなっている。人生の満足度の多くは、収入に伴って上がるが、気分の 大部分は国内の寛容度の増大によって上がる。それ故、ウェルビーイングが 収入に伴って上がる事は一概に考えにくい。それは、収入が上がるのに伴い 生活環境に対する判断も上がっていくが、気分はそうではない。 収入が増える事で、生活環境に対する評価におけるポジティブ度は上がるが、 一時的な気分には影響を与えない。気分と判断は剥離している。 ウェルビーイングの5つの要素(PERMAと言われている) ①Positive Emotion(ポジティブ感情):心の平和、感謝、満足、喜び、創造性、 希望、好奇心、愛情がここに含まれる。 自分は、どれくらい幸せと思っているのか。 主観的な要素であるが、幸福感や人生の満足度よりも上位に来る。 ②Engagement(エンゲージメント):興味を引きつけられるがあまり、没頭し、 「我を忘れる」ほど打ち込むこと。興味関心が高いか。 ③Relationships(関係性):他人と有意義かつ前向きな関係を築いている人は、 そうでない人よりも幸せである。ポジティブな状況の場合、多くは他人、他者の 存在がある。自分を気にしてくれる人がいるか。 ④Meaning(人生の意味や仕事の意義、および目的の追求):意味や意義は、私たち 自身よりも大きな大義のために尽くすことから生まれる。信仰であれ、何らかの かたちで人類の役に立とうという信念であれ、人はみな、人生に意義を 見いださなければならない。 ⑤Accomplishment/Achievement(何かを成し遂げること):人生において大きな 満足を得るためには、何らかの方法で自らを高めていく努力をしなければならない。 他の要素が得られなくとも、これのために追及する。 さらに、従来から言われている「24の強み」がこれらの要素を 支え、さらに進化させる。 自身の最高の強みを活用することで、ポジティブ感情、エンゲージメント、 意味、達成、などをより多く得られる。 ウェルビーイングの向上について ①感謝の気持を表現する。 感謝の手紙を書く。 ②上手く行ったことについて考える。 毎晩、今日上手く行った事を三つ書き出し、それらがどうして上手く 行ったかを考える。 更に、上手く行った事の中に自分の強みを考え合わせる事。 この実践は、自分の強みを自分の物にするように働きかける。 このため、VIA強みテストを受ける必要がある。上位5つが自身の強みとなる。 自身のウェルビーイングを更に高めるには以下の14のセッションを実行する。 ①ポジティブな自己紹介を800文字程度に書く。 自分が最高だった時の事を具体的に、その中で自分の強みをどのように活用したのか 説明する。 ②VIAテストで自分の徳性の強みを特定する。 ③「よいこと日記」を書き始める。毎晩、その日に起きた三つの良い事 を書く。 ④怒りや恨みの感情を書き出す。それが今の自分への悪影響となっているかを 考える。 ⑤「許しの手紙」を書いて相手の罪や関連した感情を説明して、相手を許す。 ⑥いままでキチンと感謝の気持を伝えた事のない人に感謝の手紙を書く。 手紙を相手に直接届ける。 ⑦上記の行動でポジティブ感情を高める事の重要性を再認識する。 ⑧追及者になるのではなく、満足者になることで、自分の満足度を向上 させる事を確認し、自分のための自己満足計画を立てる。 ⑨自分の目の前で逃がしたチャンスを考え、それを糧にどのような可能性 が拓かれたか、考える。 ⑩自分の強みと自分の大切な人の強みをたたえる時間を持つこと。 ⑪自分の自身の強みがどこから来ているのか、考える。 家族の強みを含む家系図を書く。 ⑫何か新しい活動を計画し、それを実行する。 ⑬かなりの時間がかかることで、自分の強みが求められる事を実行し、 時間の重要性を知る。 ⑭「快、エンゲージメント、意義を統合する人生について話し合う。 2.自分の強みを認識する。 世界的に美徳とされているものに以下の6つがあるとされる。これは様々な文化、 宗教、風土に関わらず人類に共通したものといわれる。それには、「知恵と知識」 「勇気」「愛情と人間性」「正義」「節度」「精神性と超越性」がある。 そして、この美徳を構成しているものが以下の24項目となり、個人の性格 の強みとなる。 セリグマンの「世界で1つだけの幸せ」から自分の強みを見つけて欲しい。 1)知恵と知識 ①好奇心と関心 ・常に世界に対する好奇心を持っている。 ・直ぐに退屈してしまう。 ②学習意欲 ・何か新しい事を学ぶとわくわくする。 ・わざわざ博物館や教育関連の施設などに出かけたりはしない。 ③判断力、批判的思考、偏見のなさ ・話題に対してきわめて理性的な考え方が出来る。 ・即断する傾向にある。 ④独創性、創意工夫 ・新しいやり方を考えるのが好きだ。 ・友人のほとんどは自分より想像力に富んでいる。 ⑤社会的な知性、個人的知性 ・どんな社会的状況でも適応する事が出来る。 ・他の人が何を感じているかをさっちするのは余り得意ではない。 ⑥将来の見通し ・常に物事を見て全体を理解する事が出来る。 ・他人が自分にアドバイスを求める事はめったにない。 2)勇気 ⑦武勇と勇敢さ ・強い反対意見にも立ち向かう事がよくある。 ・苦痛や失望にくじけてしまうことがよくある。 ⑧勤勉、粘り強さ、継続的努力 ・やりはじめたことは必ずやり終える。 ・仕事中に横道にそれる。 ⑨誠実、純粋、正直 ・約束は必ず守る。 ・友達から「地に足がついている」といわれた事がない。 3)人間性と愛情 ⑩思いやりと寛大さ ・この1ヶ月間に自発的に身近な人の手助けをした。 ・他人の幸せに自分の幸せと同じくらい興奮する事はめったにない。 ⑪愛する事と愛される事 ・私には、自分のこと以上に、私の感情や健康を気遣ってくれる人がいる。 ・他の人からの愛情をうまく受け入れられない。 ⑫協調性、義務感、チームワーク、忠誠心 ・グループの中にいるときが一番良い仕事ができる。 ・所属するグループの利益のために自己の利益を犠牲にすることには抵抗がある。 4)正義 ⑬公平さと公正さ ・その人がどんな人であろうと全ての人を公平に扱う。 ・好ましく思わない人の場合、その人を公平にあつかうことは難しい。 ⑭リーダーシップ ・口うるさくすることなく、いつでも人々に共同で何かをさせることが出来る。 ・グループ活動を企画するのは余り得意ではない。 5)節度 ⑮自制心 ・自分の感情をコントロールできる。 ・ダイエットは続いたことがない。 ⑯慎重さ、思慮深さ、注意深さ ・肉体的な危険をともなう活動は避ける。 ・友人関係や人間関係で、ときどき不適切な選択をしてしまう。 ⑰謙虚さと慎み深さ ・人が自分の事をほめると話題を変える。 ・自分の業績についてよく人に語る。 6)精神性と超越性 ⑱審美眼 ・ここ1ヶ月間に音楽、美術、演劇、映画、スポーツ、科学、数学など の素晴らしさに打たれたことがある。 ・この1年間美しいものを創り出していない。 ⑲感謝の念 ・どんなささいなことであっても、必ず「ありがとう」と言う。 ・自分が人より幸福であると思うことがめったにない。 ⑳希望、楽観主義、未来に対する前向きな姿勢 ・物事をいつも良いほうに考える。 ・やりたいことのために、ジックリ計画を立てることなどめったにない。 21)精神性、目的意識、信念、信仰 ・私の人生には強い目的がある。 ・人生における使命はない。 22)寛容さと慈悲深さ ・いつも過ぎたことは水に流す。 ・いつも相手と五分になろうとする。 23)ユーモアと陽気さ ・いつも可能なかぎり仕事と遊びを織り交ぜている。 ・面白い事はめったに言わない。 24)熱意、情熱、意気込み ・やることは全てにのめりこむ。 ・塞ぎこむ事が多い。 以上の24個の質問に対して、 とても当てはまる(5点)あてはまる(4点)どちらとも言えない(3点) 当てはまらない(2点)まったくあてはまらない(1点)として採点してみる。 得点が9点か10点になる項目がその人の強気である。また、得点が6点以下の項目が 弱点となる。 これでの私の強みは、 ・将来の見通し ・希望、楽観主義、未来に対する前向きな姿勢 ・精神性、目的意識、信念 の3つであった。 いずれにしろ、この強み発見は是非試してもらいたいものである。 3.ポジティブヘルス この本では、多くの実践的な試みとその手法の開発により、健康面での大きな 成果が示されている。 その定義とは、 ①主観的資産 楽観性、希望、健康の感覚、熱意、活力、人生の満足度 ②生物学的資産 心拍変動の上限、ホルモン、低濃度のインターロイキン、テロメアなど ③機能的資産 すばらしい結婚生活、歳以上の体力、豊かな人間関係、充実したライフワークなど その成果より ・心血管の健康資産 この疾患(例えば、心臓発作)に対する抵抗力を平均以上に高める主観的、 生物学的、機能的な資産は存在するのか? →結論的には、楽観性が心血管疾患から保護する事に強く関係している。 ・風邪等の感染症対応 ポジティブ感情の高い人は、平均的なポジティブ感情を持つ人よりも風邪に 罹りにくい。重要なのはネガティブ感情の大きさよりもポジティブ感情の 強さにより抵抗力は大きくなる。 以上などからここでは、ウェルビーイングの因果関係と身体への影響について 以下のように考えている。 ①楽観性は心血管の健康に、悲観性は心血管の危険性に強く関係している。 ②ポジティブな気分は、風邪やインフルエンザの予防に、またネガティブな 気分は風邪やインフルエンザに対するより大きな危険性に関係している。 ③非常に楽観的な人はがんになる危険性が低い可能性がある。 ④健康な人で、良好な心理的ウェルビーイングにある人は、全死因死亡に 対する危険性が少ない。 その要因は、 ①楽観主義者は行動的であり、健康的なライフスタイルを実践している。 すなわち、食事に気をつけ、喫煙せず、定期的に運動する傾向がある。 ②社会的な支援が多い。 人生で友人と愛情に多く恵まれている人は病気になりにくい。 ③生物学的メカニズムが高い。 脅威に対する免疫力が高い。また、度重なるストレスにより上手く対処できるが、 悲観主義者はそのストレスに一層苦しむ様になる。 また、国レベルでの調査では、 ・人生の満足度は国民一人あたりのGDPが高い国ほど高くなっている。 P399の表がそれを明瞭に示している。 しかし、金をたくさん儲けることにより直ぐに人生の満足度において 収穫逓減の点に達する。これを対数表で見ると終点のない上向きの直線 となり、国が公共政策として幸福の増大を目的とすると更なる富を生み 出さないと幸福は得られない事にもなる。 この調査で重要なのは、「あなたはどれくらい幸せですか?」ではなく、 「あなたは自分の人生にどれくらい満足しているか?」である。 この点でみると、最も裕福なアメリカ人の幸福度は平均的な原住民の 幸福度と大きな差異はない。 ------ フロリダ州立大学の歴史学教授であるDarrin M. McMahon博士によると、古代の人々は 、幸せを「幸運の証し」であると考えていたようです。 特筆すべきは、インド・ヨーロッパ語族に属する言語では、古代ギリシャ語にいたるま で例外なく、「幸せ」を意味する言葉が「幸運」を意味する言葉と語源を同じくしてい る点です。この言語学上のパターンはいったい何を示唆しているのでしょうか。多くの 古代人にとって、そしてその後に続く多数の人間にとって、幸せは自らの手でコントロ ールできる類のものではありませんでした。 こういった考え方は実際、現代でもかなり一般的です。多くの人が、幸せとは幸運であ ること、恵まれた人生であること、または単に運の良い人間であることだと思っていま す。しかし、ご存じのように、幸運を呼び込むのは不可能ではありません。一方で、ポ ジティブ心理学と、神経学などの科学分野が手を組んで、何が幸せを呼び起こしている のかを突き止めるべく、大きく前進を遂げてきました。その結果、ある程度であれば幸 せはコントロール可能であることがわかっています。 幸せはどう測り、どう研究するのか 幸せは抽象的な概念のように思えますが、その研究方法は、それ以外の概念を研究する 場合と同じで、多種多様な実験が用いられました。カリフォルニア大学バークレー校の 心理学教授であるDacher Keltner博士は、自身のオンライン講座「The Science of Happiness」の中で、「幸せ」の研究には主に4つのタイプがあると説明しています。 観測サンプリングと経験サンプリング:日常生活のある時点をとらえる研究。「皿洗い をしているとき(または仕事をしているときなど)、どの程度の幸せを感じますか」と いった問いかけが用いられる。 横断的研究/相関研究:ある時点における気持ちについて、問いに対する答えをもとに した調査研究。 継続研究:人生を長期的に追跡し、幸せの軌跡を探る研究。 実験研究:幸せと外部影響の間にある意外な関係を特定するための実験。 では、幸せの度合いはどうやって測るのでしょうか。答えは「自己申告」です。 驚くくらい単純な方法です(おまけに難点もあります)。上記に挙げたような研究では たいてい、「人生にどの程度満足していますか」とか「日常的に、どんな種類の ポジティブ感情とネガティブ感情を抱いていますか」といった質問が使われますが、 ここには、幸せを計測しようという努力が見られません。ジェダイの戦士が フォースを一切使っていない状態と同じです。被験者にただアンケートを行って、 特定の状況下で幸せを感じているかどうかを聞いているにすぎないのですから。 しかし、心もとないやりかただと思うかもしれませんが、それしかやりようがない のです。あなたが幸せかどうかを判断できるのは「あなた」だけ。 あなたの幸せレベルを測る上でもっとも信頼の置けるツールは、(現時点では) あなた自身しかいません。こういった自己申告は、経験サンプリングの際に1度限り のアンケートを行って収集する場合もあれば(被験者に突然ランダムに電話をかけ、 「今何をしていますか」「今この瞬間、どの程度の幸せを感じていますか」 と聞くような感じです)、行動指標を通じて他人が報告する場合もあります (乳幼児の研究ではこの方法が特に有益です)。 自己申告は決して完璧ではありません。どのみち、「幸せ」という感情はいくつかの 異なる意味を持っているのですから。ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマ ン 博士が「感情分析の4つのレベル」を考案したのにはそういった理由がありました。幸 せを4つの概念領域に分類すれば、分析対象がはっきりしてきます。 満足感:「私の人生は全般的にうまくいっている」 性格的特徴:「私は熱心で、前向きな人間だ」 感情:「私は感謝の念を抱いている」 感動や興奮:「熱いお風呂に入るのは気持ちが良い」 こうした4つの領域は、「幸せ」と同じような意味をもっており、被験者がどんな種類 の幸せを感じているのか(あるいは感じていないのか)をより詳しく特定するのに役立 ちます。研究者たちが幸せの研究でもっとも活用しているのは人生に対する全般的な 満足感ですが、人の幸せを正確に把握するには、すべての概念領域を考慮する必要 があります。たとえば、人生に大きな満足感を抱いている人が常に感謝の念を 抱いているとか、熱いお風呂に浸かるのを習慣にしているとかがわかれば、そこから 相関関係を導き出し、ひいては因果関係を見いだすのに役立つかもしれません。 研究者がもう少し簡単に幸せを計測できるようにと、イリノイ大学アーバナ・ シャンペーン校の心理学教授であるEdward F. Diener博士は、「主観的幸福感」 と呼ばれる指標を考案しました。心理学者たちはこの指標のおかげで、さまざまな 種類の自己申告をもとに、人生に対する満足感と、ポジティブ感情およびネガティブ 感情の相対頻度を組み合わせたかたちで、幸せをより正確に定義できるように なりました。この指標は2つの項目に分かれています。 人生満足度:これは、5つの質問文に応える自己申告式の尺度で、人生に対する全般的 な満足感を数値化できます。 ポジティブ感情とネガティブ感情(PANAS)の20項目:こちらも自己申告式アンケート で、回答しているその瞬間に感じている気持ちを評価します。 この2つの結果を組み合わせたものが、あなたの主観的幸福感になります。ある時点に おけるあなたの「幸せレベル」は、人生満足度にPANASのスコアを加えたものに相当す るわけです。もちろん、幸せのレベルは変動しますから、スコアはある時点で感じてい る幸せの程度をはじき出したものにすぎません。数日もしくは数カ月にわたって何度か アンケートに答え、平均スコアを出してみても良いでしょう。さて、幸せの科学的な研 究方法がわかったところで、次は、心理科学が幸せをどのように定義しているか (そして、より幸せになるためにそれをいかに活用していくか)を詳しく見ていきたい と思います。 ただし、これからお話しする中で念頭に置いてほしいのですが、心理学研究の領域では 近ごろ大きな議論が巻き起こっています。「心理学研究の再現性」として知られる 大規模調査が新たに実施され、その結果の全文が学術誌『Science』に掲載されました 。 それによると、心理学研究の再現を試みたところ、もとの研究と同じ結果が得られた ケースはごくわずかだったというのです。もちろん、この大規模調査は、学習、記憶、 認知に関する研究を中心にしており、幸せに関する研究やポジティブ心理学などの 他分野を対象としたものではありません。とはいえ、研究結果が何を指し示して いようとも、それは決して不変ではないことを、常に忘れずにいてください。 研究結果が示す、「幸せではない」要素とは 幸せを科学的に定義づけようと試みるのなら(幸せに限ったことではありませんが)、 消去法がベストかもしれません。「幸せではない」ことが何かわかれば、最低でも幸せ とは何なのかを絞り込めるでしょうから。カリフォルニア大学バークレー校の科学研究 センター「Greater Good Science Center」のサイエンス・ディレクターであるEmilian a Simon-Thomas博士は、長年にわたって究明されてきた基本原則がいくつかあると 言います。結論から言えば、「幸せではない」要素は、以下の通りです。 個人的な欲求がすべて満たされること 人生に対して常に満足感を抱くこと いつも喜びを感じていること ネガティブな感情を一切持たないこと 驚きましたか? もしもそうなら、あなたの持つ幸せの定義は、ほんのちょっとずれて いたのかもしれません。同大学の科学研究センターが研究を重ねて発見したのは、真の 幸せとは心の平静より大きな「良いこと」に目を向けることだそうです。幸せとは、欲 求を満たし、いつも「良い気分」でいたり、人生のあらゆる面に満足したりすること ではありません。快楽主義や、喜びや自由の追求は、一時的に幸せをもたらすこと がわかっていますが、カーネマン博士の研究によると、全般的な幸福感を長く維持 する上では効果がないようです。 幸せをめぐる要素でとりわけ重要なのは、今この瞬間にあなたが感じている かもしれないネガティブな感情です。ネガティブな感情など存在しないほうが 良いような気がするかもしれませんが、「ネガティブな感情がなければ幸せ」という わけではありません。 社会心理学の博士研究員であるVanessa Buote氏は『ハーバード・ビジネス・レビュー 』の記事の中で、真の幸せとは幸運も不運も受け入れることだと述べています。 幸せならいつも明るく、喜びに満ちて、満足しており、どんな時でも笑顔でいるだろう と思われがちですが、それは誤解です。そうではありません。幸せで豊かな人生は、楽 あれば苦ありの日々を受け入れることであり、悪いことを違った視点から見る方法を学 ぶことなのです。 ネガティブな感情にさいなまれながらも、人生に幸せを感じることはできます。 むしろ、そうする方法を身につけるのが、幸せな人間になるために欠かせないのです。 幸せの追求には限界がある これで、科学が幸せをどう定義しているのかがわかりました。しかし、それでは幸せに ついて半分しかわかったことになりません。それよりも大事なのは、「自分は幸せにな れるのか」ということ。簡単に言ってしまえば、答えは「イエス」なのですが、脳内に ある化学物質のアンバランスを調整するための処方薬をのぞけば、幸せになれる「魔法 の薬」など存在しません。幸せになるには意識的な努力が必要であり、それには制約も ついてきます。 まず、あなたの幸せの範囲は、おそらく、遺伝的に決められています。カリフォルニア 大学リバーサイド校のSonja Lyubomirsky博士によると、これはつまり、受け継いだ遺 伝子により、現在の、あるいは「慢性的な」幸せレベルが維持されている可能性がある という意味です。ふさぎ込むことの多い家系に生まれたのであれば、あなたもまたそう いうタイプかもしれません。さらに、どこまで幸せになれるのかという最大限度も、遺 伝子が決めている可能性があります。基本的に、幸せはあなたの人となりの一部、 あなた自身の一部なのです。Lyubomirsky博士によると、人間の幸福感は生涯にわたっ て きわめて一定していることが継続研究からわかっているそうです。というわけで、 みじめな人間を一夜にして世界で1番ハッピーな人間に変身させる術はありません。 次に、幸せになろうと努力するあまり、自分に対していたずらに制限を設けてしまう 可能性があります。カリフォルニア大学サンフランシスコ校のLahnna I. Catalino博士 は、必要以上に幸せを追求するとかえって裏目に出るかもしれないとして、極端な方法 で幸せを得ようとするのはやめるべきだと警鐘を鳴らしています。自分に非現実的な目 標 を課したり、絶えず前向きな気持ちを維持しようとがんばったりしてはいけません。 失敗するのは目に見えていますし、皮肉にも、そのせいで不幸せになってしまう でしょう。精神科医であり、『F*ck Feelings: One Shrink's Practical Advice for M anaging All Life's Impossible Problems』の共著者でもあるMichael Bennett氏は、幸せを 追求するなら、地に足をつけた姿勢が重要だと指摘しています。 大事なのは、どんなセラピーに従うかではなく、常識的で落ち着いた状態を保つこと です。どんなセラピーをどれだけ試そうが「このセラピーで自分は到達できるところ まで行けたのだろうか」と繰り返し自分自身に問いかけることが大切です。 そうすれば、「もっとうまくやれれば」とか「もっと長く続ければ」「もっと良い セラピストが見つかれば」という思考を堂々巡りせずに済みます。それよりも、 「自分が到達できるところまで行けたのなら、次はどうしたらいいのだろうか」 と考えるべきです。 忘れてならないのは、自分の手には負えない限界があることです。それについて自分を 責めてはいけません。あなたはあなたらしくいるだけなのですから。Catalino博士は、 無理に幸せになろうとするよりも、一瞬一瞬に目を向け、自分に喜びをもたらす活動と じっくり向き合うようすすめています。幸せになろうとがんばるのはもうおしまい にしましょう。 幸せいっぱいの人が持つ共通点とは何か 本当のことを言えば、真の幸せと満足感は、1つしかないわけではありません。 幸せとは遺伝的特徴と、気持ちと、性格と、感情と、人生におけるさまざまな 事情や状況が合わさって最高の時を迎えた状態なのです。大きな声では言えませんが、 幸せに関しては研究者たちもいまだ論争の最中であり、それが何なのかはよく わかっていません。とはいえ、少なくとも幸せが「どんなふうに見えるのか」 は研究からかなり明らかになっています。人によって限界がまちまちとはいえ、 個人的な幸せの限度を最大限に広げるためにできることがあるのです。 具体的には、たっぷり運動をして(内心で目標を定めておくと効果がアップします)、 十分な睡眠をとり、心の知能指数(EQ)を育み、モノではなく経験にお金を費やすこと から始めてみると良いでしょう。何を目標にすれば良いのかわからないなら、 「PERMA」を覚えておいてください。PERMAは、心理学者でポジティブ心理学の提唱者 であるマーティン・セリグマン氏が編み出し、著者『ポジティブ心理学の挑戦 "幸福"から"持続的幸福"へ』の中でも紹介されているもので、健康で満足した状態を 示す、5つの主要要素の頭文字を取っています。 Positive Emotion(ポジティブ感情):心の平和、感謝、満足、喜び、創造性、希望、 好奇心、愛情がここに含まれる。 Engagement(エンゲージメント):興味を引きつけられるがあまり、没頭し、「我を忘 れる」ほど打ち込むこと。 Relationships(関係性):他人と有意義かつ前向きな関係を築いている人は、 そうでない人よりも幸せである。 Meaning(人生の意味や仕事の意義、および目的の追求):意味や意義は、私たち 自身よりも大きな大義のために尽くすことから生まれる。信仰であれ、何らかの かたちで人類の役に立とうという信念であれ、人はみな、人生に意義を 見いださなければならない。 Accomplishment/Achievement(何かを成し遂げること):人生において大きな 満足を得るためには、何らかの方法で自らを高めていく努力をしなければならない。 幸せの科学的な解明は、まだまだ続きます。けれども、これまでの研究から、幸せがた だ幸運を意味するものではないことが明らかになっています。実際に、手の内のカード が他人より恵まれない場合もあるでしょう。でも、それでどうプレイするかはあなた次 第です。それどころか、幸せとは、いかにプレイするかということでさえありません。 多くの研究者たちはこう言うのではないでしょうか。どのようなカードであっても、 そのゲームを楽しむ道を見つけることが大事なのだと。 Patrick Allan(原文/訳:遠藤康子/ガリレオ) Photo by Shutterstock.
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