幸せいっぱいの人が持つ共通点はあるのか、お金持ちといわれる人がそうなのか、 いつもニコニコと笑い周りに喜びを与える人なのか、私も含め、古い時代には 働くことで収入が増え、ほしいものが変えることが幸せだ、という時代もあった。 しかしながら、幸せと満足感は、1つしかないわけではない。特に最近の状況を 知れば知るほど、その感じを強める。 幸せとは遺伝的特徴と、気持ちと、性格と、感情と、人生におけるさまざまな 事情や状況が合わさって最高の時を迎えた状態なのであろうが、それが何なのかは 心理学者も含めよくわかっていないようだ。 だが、少なくとも幸せが「どんなふうに見えるのか」は研究からかなり明らかに なっているという。人によって限界がまちまちとはいえ、個人的な幸せの限度を 最大限に広げるためにできることがある。 具体的には、たっぷり運動をして(内心で目標を定めておくと効果がアップ)、 十分な睡眠をとり、心の知能指数(EQ)を育み、モノではなく経験にお金を費やすこと から始めてみるのがよいとされる。 1つには、心理学者でポジティブ心理学の提唱者であるマーティン・セリグマン氏が 編み出した「PERMA」という概念がある。これは以前にも紹介しているが、PERMAは、 「持続的幸福」の実現要素と言われている。 Positive Emotion(ポジティブ感情):心の平和、感謝、満足、喜び、創造性、希望、 好奇心、愛情がここに含まれる。 Engagement(エンゲージメント):興味を引きつけられるがあまり、没頭し、 「我を忘れる」ほど打ち込むこと。 Relationships(関係性):他人と有意義かつ前向きな関係を築いている人は、 そうでない人よりも幸せである。 Meaning(人生の意味や仕事の意義、および目的の追求):意味や意義は、私たち 自身よりも大きな大義のために尽くすことから生まれる。信仰であれ、何らかの かたちで人類の役に立とうという信念であれ、人はみな、人生に意義を 見いださなければならない。 Accomplishment/Achievement(何かを成し遂げること):人生において大きな 満足を得るためには、何らかの方法で自らを高めていく努力をしなければならない。 セリグマン氏は、その著書の中で、24項目のチェックを提示している。 さらには、様々な幸せへのアプローチを続けている研究者がいる。 幸せは抽象的な概念のように思えるが、多種多様な実験が用いられてきた。 カリフォルニア大学バークレー校の心理学教授であるDacher Keltner博士は、 自身のオンライン講座「The Science of Happiness」の中で、「幸せ」の 研究には主に4つのタイプがあると説明している。 観測サンプリングと経験サンプリング:日常生活のある時点をとらえる研究。 「皿洗いをしているとき(または仕事をしているときなど)、どの程度の幸せを 感じますか」といった問いかけが用いられる。 横断的研究/相関研究:ある時点における気持ちについて、問いに対する答え をもとにした調査研究。 継続研究:人生を長期的に追跡し、幸せの軌跡を探る研究。 実験研究:幸せと外部影響の間にある意外な関係を特定するための実験。 これらで、幸せの度合いは「自己申告」による。 自己申告は、経験サンプリングの際に1度限りのアンケートを行って収集する場合も あれば(被験者に突然ランダムに電話をかけ、「今何をしていますか」「今この瞬間、 どの程度の幸せを感じていますか」と聞くような感じ)、行動指標を通じて他人が 報告する場合もある。 ダニエル・カーネマン博士が「感情分析の4つのレベル」を考案している。 幸せを4つの概念領域に分類すれば、分析対象がはっきりしてくる。 ・満足感:「私の人生は全般的にうまくいっている」 ・性格的特徴:「私は熱心で、前向きな人間だ」 ・感情:「私は感謝の念を抱いている」 ・感動や興奮:「熱いお風呂に入るのは気持ちが良い」 こうした4つの領域は、「幸せ」と同じような意味をもっており、被験者がどんな 種類の幸せを感じているのか(あるいは感じていないのか)をより詳しく特定する のに役立つ。研究者たちが幸せの研究でもっとも活用しているのは人生に対する 全般的な満足感ですが、人の幸せを正確に把握するには、すべての概念領域を 考慮する必要がある。たとえば、人生に大きな満足感を抱いている人が常に 感謝の念を抱いているとか、熱いお風呂に浸かるのを習慣にしているとかが わかれば、そこから相関関係を導き出し、ひいては因果関係を見いだすのに役立つ。 イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の心理学教授であるEdward F. Diener博士は、 「主観的幸福感」と呼ばれる指標を考案した。心理学者たちはこの指標のおかげで、 さまざまな種類の自己申告をもとに、人生に対する満足感と、ポジティブ感情および ネガティブ感情の相対頻度を組み合わせたかたちで、幸せをより正確に定義できる ようになった。 この指標は2つの項目に分かれている。 人生満足度:これは、5つの質問文に応える自己申告式の尺度で、人生に対する全般的 な満足感を数値化できる。 ポジティブ感情とネガティブ感情(PANAS)の20項目:こちらも自己申告式 アンケートで、回答しているその瞬間に感じている気持ちを評価する。 この2つの結果を組み合わせたものが個人の主観的幸福感であり、ある時点に おけるあなたの「幸せレベル」は、人生満足度にPANASのスコアを加えたもの に相当する。 また、研究結果の1つに「幸せではない」要素を提示するがあったという。 バークレー校の科学研究センター「Greater Good Science Center」のサイエンス・ ディレクターであるEmiliana Simon-Thomas博士は、長年の究明で、 「幸せではない」要素は、があるという。 ・個人的な欲求がすべて満たされること ・人生に対して常に満足感を抱くこと ・いつも喜びを感じていること ・ネガティブな感情を一切持たないこと 科学研究センターが研究を重ねて発見したのは、真の幸せとは心の平静より大きな 「良いこと」に目を向けることだそうだ。幸せとは、欲求を満たし、いつも 「良い気分」でいたり、人生のあらゆる面に満足したりすることではない。 幸せをめぐる要素でとりわけ重要なのは、今この瞬間にあなたが感じている かもしれないネガティブな感情という。「ネガティブな感情がなければ幸せ」 というわけではない。 別の研究では、真の幸せとは幸運も不運も受け入れることだという。 幸せならいつも明るく、喜びに満ちて、満足しており、どんな時でも笑顔でいるだろう と思われがちだが、そうではなく、幸せで豊かな人生は、楽あれば苦ありの日々を 受け入れることであり、悪いことを違った視点から見る方法を学ぶことにある。 最後は、ごく一般的な幸せの定義となったが、最後の「幸せで豊かな人生は、 楽あれば苦ありの日々を受け入れることであり、悪いことを違った視点から見る 方法を学ぶこと」はお互い肝に銘ずるべきことかもしれないようだ。
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研究者がもう少し簡単に幸せを計測できるようにと、イリノイ大学アーバナ・ シャンペーン校の心理学教授であるEdward F. Diener博士は、「主観的幸福感」 と呼ばれる指標を考案しました。心理学者たちはこの指標のおかげで、さまざまな 種類の自己申告をもとに、人生に対する満足感と、ポジティブ感情およびネガティブ 感情の相対頻度を組み合わせたかたちで、幸せをより正確に定義できるように なりました。この指標は2つの項目に分かれています。 人生満足度:これは、5つの質問文に応える自己申告式の尺度で、人生に対する全般的 な満足感を数値化できます。 ポジティブ感情とネガティブ感情(PANAS)の20項目:こちらも自己申告式アンケート で、回答しているその瞬間に感じている気持ちを評価します。 この2つの結果を組み合わせたものが、あなたの主観的幸福感になります。ある時点に おけるあなたの「幸せレベル」は、人生満足度にPANASのスコアを加えたものに相当す るわけです。もちろん、幸せのレベルは変動しますから、スコアはある時点で感じてい る幸せの程度をはじき出したものにすぎません。数日もしくは数カ月にわたって何度か アンケートに答え、平均スコアを出してみても良いでしょう。さて、幸せの科学的な研 究方法がわかったところで、次は、心理科学が幸せをどのように定義しているか (そして、より幸せになるためにそれをいかに活用していくか)を詳しく見ていきたい と思います。 ただし、これからお話しする中で念頭に置いてほしいのですが、心理学研究の領域では 近ごろ大きな議論が巻き起こっています。「心理学研究の再現性」として知られる 大規模調査が新たに実施され、その結果の全文が学術誌『Science』に掲載されました 。 それによると、心理学研究の再現を試みたところ、もとの研究と同じ結果が得られた ケースはごくわずかだったというのです。もちろん、この大規模調査は、学習、記憶、 認知に関する研究を中心にしており、幸せに関する研究やポジティブ心理学などの 他分野を対象としたものではありません。とはいえ、研究結果が何を指し示して いようとも、それは決して不変ではないことを、常に忘れずにいてください。 研究結果が示す、「幸せではない」要素とは 幸せを科学的に定義づけようと試みるのなら(幸せに限ったことではありませんが)、 消去法がベストかもしれません。「幸せではない」ことが何かわかれば、最低でも幸せ とは何なのかを絞り込めるでしょうから。カリフォルニア大学バークレー校の科学研究 センター「Greater Good Science Center」のサイエンス・ディレクターであるEmilian a Simon-Thomas博士は、長年にわたって究明されてきた基本原則がいくつかあると 言います。結論から言えば、「幸せではない」要素は、以下の通りです。 個人的な欲求がすべて満たされること 人生に対して常に満足感を抱くこと いつも喜びを感じていること ネガティブな感情を一切持たないこと 驚きましたか? もしもそうなら、あなたの持つ幸せの定義は、ほんのちょっとずれて いたのかもしれません。同大学の科学研究センターが研究を重ねて発見したのは、真の 幸せとは心の平静より大きな「良いこと」に目を向けることだそうです。幸せとは、欲 求を満たし、いつも「良い気分」でいたり、人生のあらゆる面に満足したりすること ではありません。 快楽主義や、喜びや自由の追求は、一時的に幸せをもたらすこと がわかっていますが、カーネマン博士の研究によると、全般的な幸福感を長く維持 する上では効果がないようです。 幸せをめぐる要素でとりわけ重要なのは、今この瞬間にあなたが感じている かもしれないネガティブな感情です。ネガティブな感情など存在しないほうが 良いような気がするかもしれませんが、「ネガティブな感情がなければ幸せ」という わけではありません。 社会心理学の博士研究員であるVanessa Buote氏は『ハーバード・ビジネス・レビュー 』の記事の中で、真の幸せとは幸運も不運も受け入れることだと述べています。 幸せならいつも明るく、喜びに満ちて、満足しており、どんな時でも笑顔でいるだろう と思われがちですが、それは誤解です。そうではありません。幸せで豊かな人生は、楽 あれば苦ありの日々を受け入れることであり、悪いことを違った視点から見る方法を学 ぶことなのです。 ネガティブな感情にさいなまれながらも、人生に幸せを感じることはできます。 むしろ、そうする方法を身につけるのが、幸せな人間になるために欠かせないのです。 幸せの追求には限界がある これで、科学が幸せをどう定義しているのかがわかりました。しかし、それでは幸せに ついて半分しかわかったことになりません。それよりも大事なのは、「自分は幸せにな れるのか」ということ。簡単に言ってしまえば、答えは「イエス」なのですが、脳内に ある化学物質のアンバランスを調整するための処方薬をのぞけば、幸せになれる「魔法 の薬」など存在しません。幸せになるには意識的な努力が必要であり、それには制約も ついてきます。 まず、あなたの幸せの範囲は、おそらく、遺伝的に決められています。カリフォルニア 大学リバーサイド校のSonja Lyubomirsky博士によると、これはつまり、受け継いだ遺 伝子により、現在の、あるいは「慢性的な」幸せレベルが維持されている可能性がある という意味です。ふさぎ込むことの多い家系に生まれたのであれば、あなたもまたそう いうタイプかもしれません。さらに、どこまで幸せになれるのかという最大限度も、遺 伝子が決めている可能性があります。基本的に、幸せはあなたの人となりの一部、 あなた自身の一部なのです。 Lyubomirsky博士によると、人間の幸福感は生涯にわたってきわめて一定していること が継続研究からわかっているそうです。というわけで、みじめな人間を一夜にして 世界で1番ハッピーな人間に変身させる術はありません。 次に、幸せになろうと努力するあまり、自分に対していたずらに制限を設けてしまう 可能性があります。カリフォルニア大学サンフランシスコ校のLahnna I. Catalino博士 は、必要以上に幸せを追求するとかえって裏目に出るかもしれないとして、極端な方法 で幸せを得ようとするのはやめるべきだと警鐘を鳴らしています。 自分に非現実的な目標を課したり、絶えず前向きな気持ちを維持しようとがんばったり してはいけません。 失敗するのは目に見えていますし、皮肉にも、そのせいで不幸せになってしまう でしょう。 精神科医であり、『F*ck Feelings: One Shrink's Practical Advice for Managing All Life's Impossible Problems』の共著者でもあるMichael Bennett氏は、幸せを 追求するなら、地に足をつけた姿勢が重要だと指摘しています。 大事なのは、どんなセラピーに従うかではなく、常識的で落ち着いた状態を保つこと です。どんなセラピーをどれだけ試そうが「このセラピーで自分は到達できるところ まで行けたのだろうか」と繰り返し自分自身に問いかけることが大切です。 そうすれば、「もっとうまくやれれば」とか「もっと長く続ければ」「もっと良い セラピストが見つかれば」という思考を堂々巡りせずに済みます。それよりも、 「自分が到達できるところまで行けたのなら、次はどうしたらいいのだろうか」 と考えるべきです。 忘れてならないのは、自分の手には負えない限界があることです。それについて自分を 責めてはいけません。あなたはあなたらしくいるだけなのですから。Catalino博士は、 無理に幸せになろうとするよりも、一瞬一瞬に目を向け、自分に喜びをもたらす活動と じっくり向き合うようすすめています。幸せになろうとがんばるのはもうおしまい にしましょう。 幸せいっぱいの人が持つ共通点とは何か 本当のことを言えば、真の幸せと満足感は、1つしかないわけではありません。 幸せとは遺伝的特徴と、気持ちと、性格と、感情と、人生におけるさまざまな 事情や状況が合わさって最高の時を迎えた状態なのです。大きな声では言えませんが、 幸せに関しては研究者たちもいまだ論争の最中であり、それが何なのかはよく わかっていません。とはいえ、少なくとも幸せが「どんなふうに見えるのか」 は研究からかなり明らかになっています。人によって限界がまちまちとはいえ、 個人的な幸せの限度を最大限に広げるためにできることがあるのです。 具体的には、たっぷり運動をして(内心で目標を定めておくと効果がアップします)、 十分な睡眠をとり、心の知能指数(EQ)を育み、モノではなく経験にお金を費やすこと から始めてみると良いでしょう。何を目標にすれば良いのかわからないなら、 「PERMA」を覚えておいてください。PERMAは、心理学者でポジティブ心理学の提唱者 であるマーティン・セリグマン氏が編み出し、著者『ポジティブ心理学の挑戦 "幸福"から"持続的幸福"へ』の中でも紹介されているもので、健康で満足した状態を 示す、5つの主要要素の頭文字を取っています。 Positive Emotion(ポジティブ感情):心の平和、感謝、満足、喜び、創造性、希望、 好奇心、愛情がここに含まれる。 Engagement(エンゲージメント):興味を引きつけられるがあまり、没頭し、「我を忘 れる」ほど打ち込むこと。 Relationships(関係性):他人と有意義かつ前向きな関係を築いている人は、 そうでない人よりも幸せである。 Meaning(人生の意味や仕事の意義、および目的の追求):意味や意義は、私たち 自身よりも大きな大義のために尽くすことから生まれる。信仰であれ、何らかの かたちで人類の役に立とうという信念であれ、人はみな、人生に意義を 見いださなければならない。 Accomplishment/Achievement(何かを成し遂げること):人生において大きな 満足を得るためには、何らかの方法で自らを高めていく努力をしなければならない。 幸せの科学的な解明は、まだまだ続きます。けれども、これまでの研究から、幸せがた だ幸運を意味するものではないことが明らかになっています。実際に、手の内のカード が他人より恵まれない場合もあるでしょう。でも、それでどうプレイするかはあなた次 第です。それどころか、幸せとは、いかにプレイするかということでさえありません。 多くの研究者たちはこう言うのではないでしょうか。どのようなカードであっても、 そのゲームを楽しむ道を見つけることが大事なのだと。 ネガティブな感情をポジティブに変化させるコツは、ネガティブな感情を正しく認識で きるようにし、どんな行動の変化がその感情を軽減できるか突き止めることだ ILLUSTR ATION: CHRISTOPHER KAESER/THE WALL STREET JOURNAL By ELIZABETH BERNSTEIN 2016 年 8 月 23 日 13:48 JST 朗報がある。「落ち込む」という感情には利点があるのだ。 一部の専門家の間で「ポジティブ心理学の第2波」と呼ばれる潮流がある。自分に不 快感や不満をもたらすネガティブな感情には良いこともあると、多くの心理学者が認識 し始めているのだ。ネガティブな感情を注視すれば、自分の生活で何か悪いのかを特定 し、変化を求める一助になり得る。研究によれば、ポジティブ思考だけでなくネガティ ブ思考も抱く人のほうが健康的であることさえ分かってきた。 これは、1990年代末以降に人気を博している心理学的アプローチに対抗するものだ。 当時台頭した「ポジティブ心理学」という分野では、人は単に苦悩から自由になるだけ でなく成功すべきとの考え方に基づき、陽気な感情と気質が強調された。ポジティブな 感情の力をどう使えばより幸福になるかについて、何千にも上る研究論文や書籍や雑誌 の記事が出版された。 これに対し米ノックス大学(イリノイ州)のフランク・マカンドリュー教授(心理学 )は、ネガティブな感情を「赤ん坊の泣き声のように」考えたらいいと説く。「それは 不快で嫌悪感を引き起こすが、何か良いことをしようという気にもさせる」 すべてのネガティブな感情に良い面があるというわけではない。希望のなさ、無価値 と感じる感情、あるいは絶望といった感情(心理学者はこれらを「空虚な感情」と呼ぶ )は通常、うつの兆候であって、利点に変えるのは不可能に近い。こうした感情が2週 間以上続いた場合、プロの助言を求めるべきだと専門家たちは言う。 有益になり得るネガティブな感情、つまり通常ポジティブな変化に利用できる感情に は、罪の意識、怒り、悲しみ、不安、ねたみ、孤独などがある。空虚な感情とは違って 、これらの感情は現実に基づいていることが多い。何かが実際に起きて人をそのように 感じさせているわけだ。そして、悪い行動(自身の行動であれ他人の行動であれ)から 自らを守る必要があるとの警告を発している。 ネガティブな感情をポジティブに変化させるコツは、ネガティブな感情を正しく認識 できるようにし、どんな行動の変化がその感情を軽減できるか突き止めることだ。目標 はその感情を追い出すことではなく、ポジティブな変化のためにそれを利用することで ある。 コツをいくつか紹介しよう。 ・感情を言葉で表現する 感情を一言で表現しよう。「私は怒っている」「私は悲しい」などと自分に言ってみ ることだ。 何を感じているか正確に認識することが難しければ、自分の体に聞いてみるといい。 サンディアゴ在住の臨床ソーシャルワーカー、マリエル・ディアズ氏によれば、深呼吸 を5~10回してみる。心臓が速くなっている場合は、不安を抱いている公算が大きい。 胸に重い感情がある場合は、恐らく悲しい。あごに緊張感がある場合は、怒っているし るしだ。 ・良い面と悪い面のリストを作成する ネガティブな感情は、何かを変える必要があるというシグナルだ。しかし、それを変 えたら気分が良くなるということを知るにはどうしたらいいのか。それには長短両面を 比較する必要がある。 あなたが抱くネガティブな感情の原因になった行動を考えてみる。そしてその行動に よって気分が良くなった側面をすべてリストアップしよう。反対側のページには、その 行動があなたの気分を悪くした側面をすべてリストアップする。 例えば、あなたが何かの行為に罪の意識を感じたとしよう。昨晩、仲間と外出して、 あなたがそこにいない友人のうわさ話をしたようなケースだ。良い面を列挙した欄には 、仲間たちが注目してうわさ話に聞き入り、うわさ話をしている時に自分が人気者にな ったという感情が記載されるかもしれない。悪い面を列挙した欄には、その後、よく眠 れなかったことが記載されるかもしれない。あなたが罪の意識を感じ、午前中ずっとい らいらし、うわさ話の対象にした友人にばれるかもしれないと心配しているからだ。そ の上で自問してみよう。良い面の感情は悪い面の感情を抱かせてもいいほどの価値があ ったのか、と。 アトランタ在住の精神科医のダイオン・メツガー氏は「嫌な感情は防御機能を持つこ とがある。人生で回避する必要のあるものを教えてくれるからだ」と述べる。同氏は自 分の患者にこの手法を利用するよう指示することが多いという。 ・「すべき」との内なる声に耳を傾ける われわれには誰でも「内なる批判者」がいて、何を「すべきか」を教えてくれる。そ の声に耳を傾けることが大切だ。 あなたがカクテルパーティーに出席していて、別の招待客の女性が職場での自らの昇 進について話しているとしよう。彼女は自分の新しい責任に興奮している。海外出張も あるだろうし、大幅な昇給も得たという。それを聞いていたあなたは煩わしくなり、彼 女のことが好きになれなくなった。あなたは「ねたんでいる」のだ。 あなたの「内なる批判者」は何と言うだろうか。もっと一生懸命働いて、上司の印象 をよくすべきだと言うのか。あるいは人脈を頼って新しい職場を探すべきだと言うのか 。「『内なる批判者』は、どんな行動をとるべきかをあなたに教えてくれる」と、前出 のディアズ氏は言う。