2016年9月1日木曜日

ポジティブ・サイコセラピーの効果

http://positiveinnovation.org/files/pdf/200909_hirai.pdf

ポジティブ心理学を活用した
プログラム開発の実際
~強み開発アプローチの実践例から~
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本発表の概要
強み開発アプローチの紹介
強みとは何か
強み開発の意義
強みを発見するツール
実践例の紹介
Azusa Pacific Universityにおける強み開発アプローチの展開
ポジティブ・サイコセラピーの効果
日本における強み開発セミナーの紹介
強み開発アプローチの今後の課題と可能性
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人間は弱みや問題点を克服しようと努力するよりも、
すでにある強みや才能を活かそうとする方が、より多
くを得ることができる (Clifton & Harter, 2003)
弱み克服モデルから
問題点や弱みを発見し、それを解決・補強する
失敗を予防する
強み活用モデルへ
強みを発見し、それを活かす
成功を促進する
強み開発アプローチの基本的な考え方
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1900年以降の心理学の研究テーマの数から
ポジティブとネガティブな側面のバランスを取り戻す
速読法訓練の成果の違いから
同じ訓練でも強みを活かすと成果が飛躍的に伸びる!
ギャラップ社によるTop Achievers (非常に成功した
人々)の研究から
→成功者の共通点は、強みの発見と育成!
なぜ強みにフォーカスするのか
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能力としての強み
例:ストレングス・ファインダー
人格としての強み
例:VIA-IS
上記の2つを発見・育成することで、個人の強みが向上
し、ひいてはチームや組織の強みの発揮にもつながってい
く(Schreiner & Hulme, 2009)
強み=(才能+エネルギー)×(知識+スキル)
人格
能力 個人の成長
組織の成長
強みとは?
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ストレングス・ファインダー (Strength Finder)
34の才能から、5つのとっておきの才能を発見する尺度
共感性、目標志向、分析思考、社交性、公平性、調和性、など
尺度としての高い妥当性と信頼性
20カ国以上、400万人以上の人々に利用されてきた
アメリカでは400以上の大学で利用されている
日本語版は、「さあ、才能(じぶん)に目覚めよう―あなた
の5つの強みを見出し、活かす」(日本経済新聞社)を購
入することで、オンラインで受検可能
www.strengthsquest.com
強みを発見するツール
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VIA-IS (Values In Action-Inventory of Strength)
Chris PetersonとMartin Seligmanによって開発
人間の様々な人徳と強みを6つの領域と24のカテゴリーに整
理
知恵と知識、勇気、人間性、正義、節度、超越性
質問紙は240項目からなり、オンラインで受検可能
http://www.viacharacter.org/
ほとんどの文化で尊重されている徳・強みを抽出
それ自体が精神的・道徳的に尊重されている
強みを発見するツール
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MBTI (Myers-Briggs Type Indicator)
ユングのタイプ論に基づいて開発された性格検査
4つの指標(外向vs内向、感覚vs直観、思考vs感情、判断
的態度vs知覚的態度)をもとに、性格の特徴を16のタイ
プに類型化
24カ国語に翻訳、45カ国以上で利用され、世界で最も普
及している性格検査と言われている
本人の強みを発揮しやすい環境や仕事・活動内容につい
て有用な情報を提供
http://www.mbti.or.jp/
強みを発見するツール
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強みを発見するツール
対話による強みの発見
学生時代に好きだった科目は?
子どもの頃夢中になれた活動は?
これまでの中で自分の心をわくわくさせてくれた体
験は?
重要な他者(親や友達、先生など)があなたについ
て褒めてくれたことは?
逆境を乗り越えることを助けてくれた力は?
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Laurie Schreiner, Ph.D. & Eileen Hulme, Ph.D. による報告
大学のカリキュラム(オリエンテーション、ゼミ、インター
ンシップ、教授法など)に強み開発アプローチを適用
ストレングスファインダーを活用した「ストレングスクエス
ト」プログラム
www.apu.edu/strengthsacademy
実践例1: Azusa Pacific University!"#$
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強み開発のステップ
1. 強みを発見する
2. その強みを周りの人と確認・共有する
3. 知識とスキルを学び、エネルギーと努力を費やす
ことで、強みを育成する
4. 強みを新しい状況や難しい状況に適用する
5. 自分の持っている他の強みや、他人の持っている
強みを組み合わせることで、卓越した結果を創り
出す
強みの発見から強みの開発へ
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1年生
強み開発アプローチの哲学について紹介する
新入生全員にストレングスファインダーを受検してもら
う
1年生のゼミでストレングスファインダーの結果を使って
自己分析を行う
強みを活かすためのアドバイジングと目標設定のための
個人セッションを設ける
学習チームを編成し、課題に多様性を持たせる
大学における強み開発アプローチの適用例
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2年生
強みを活かした専攻およびキャリアの選択
教員との共同プロジェクトの機会
3年生
インターンシップで実際に強みを活用する
学生リーダーとして下級生にアドバイジングを行う
4年生
強みを活かした就職活動
エントリーシートや面接で強みをアピール
大学における強み開発アプローチの適用例
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新しい教員は全員ストレングスファインダーを受検し、強み
開発アプローチによる研修への参加が推奨される
教員が自分の強みを活かした授業の計画と実施ができるよ
うな研修が実施されている
職員がお互いの強みを理解し、チームとしても強みを発揮で
きるよう、強み開発アプローチの研修が行われている
大学における強み開発アプローチの適用例
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質的な効果測定
自分の強みへの理解が深まる
自尊心が高まる
成功したいというモチベーションが高まる
自分の未来に対しての自信が高まる
強みをより頻繁に育て、活用するようになる
他者理解が深まり、対人関係が向上する
どのような効果があるのか?
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量的な効果測定
強み開発アプローチによる授業と従来の授業を比較
一学期の前後に質問紙を配布して、点数の変化を比較
統計的に明らかな違いが見られた
試験の成績、スキルの獲得、学習へのコミットメント
(Cantwell, 2005)
勉強に対する自己効力感 (Gomez, 2008)
大学生活に対する満足感、授業に対する満足感
(Schreiner, 2008)
どのような効果があるのか?
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実践例1の特長
強みの発見のみに終わらず、強みの開発を含めてプロ
グラムをデザインした点
1クラスや1学期のみでなく、長期的なプラン(1年
生~4年生まで)を組み立てた点
学生にとどまらず、職員や教員も含めて、大学全体で
取り組んだ点
効果を質的分析のみでなく、数量的にも明確化した点
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Martin Seligman, Tayyab Rashid, & Acacia Parksによっ
て開発
うつ病を改善するプログラム
インターネットを利用したセルフプログラム
喜びや感謝、強みや生きる意味など、ポジティブ心理学の
テーマにそったセッション
実践例2:ポジティブ・サイコセラピー
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目的:うつの症状や原因に焦点を当てるのではなく、生活
の中の肯定的な側面に注意を向け、クライアントが既に持っ
ている強みや資源を活用できるように援助し、うつ病を改
善すること
方法:ポジティブ心理学のテーマに基づいた講義とワーク
を、インターネットを通して受講する。セッション数は14
セッション。おおよそ1週間に1セッションを進めていく。
ポジティブ・サイコセラピーの内容
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強み
VIA-ISを受検し、とっておきの強みを5つ発見する。その後、
それらの強みを実際の生活により頻繁に活かしていく方法を書
き留める
感謝
夜眠る前に、その日の出来事でよかったことを3つ書きだし、
それらがなぜ起こったのかについての理由を考えてみる
充分に味わう(Savoring)
いつもなら意識せずさっとやってしまうこと(食事やシャワー
など)を一つ選び、そのことにゆっくり時間をとって味わって
みる。その後、どのように感じ方が違ったかを記述する。
使用されるテーマとワークの例
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研究1:軽度~中程度のうつ症状をもつ大学生を対象にし
たグループPPT
40人の大学生が対象
プログラムを受けなかった学生に比べて、受けた学生は、うつの症
状の軽減および人生への満足度の増加が見られた
プログラムを受けた学生は、1年後でもうつ症状が引き続き軽減して
いた

ポジティブ・サイコセラピーの効果
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研究2:うつ病を煩うクライアントへの個人PPT
対象はうつの治療にカウンセリングセンターに訪れたクライアント
46名
3グループのうつ改善状況を比較
ポジティブ・サイコセラピー
典型的な個人セラピー
典型的な個人セラピー+抗うつ薬
PPTをうけたクライアントが、他の2つの治療方法に比べて、最も
大きな変化(うつ症状の軽減および人生への満足感)がみられた

実践例2の特長
問題を直接には取り扱わず、ポジティブな側面に焦点
を当てるモデルの有効性を示した点
対面ではなく、インターネットを使ったセルフセラ
ピーという新しいセラピーの形を提案した点
セラピーを受けなかったグループとの比較のみでな
く、典型的なセラピーおよび薬物療法との効果の比較
も行った点
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一般社会人を対象としたワークショップ
これまで23名を対象に2回実施
強み、フロー、レジリエンスの3つのテーマについて、講義
とグループワークを使用しながら、自己理解を深める
セミナー修了後は、ワークブックを配布し、日常における学
びの実践を促進
セミナーの前後および一ヶ月後に人生の満足度と仕事への
満足度に関する質問紙を配布して効果検証

実践例3:日本における実践
「ポジティブ心理学による強み開発セミナー」
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実践例3:日本における実践
「ポジティブ心理学による強み開発セミナー」
主要なテーマは、
・強みを知り、活かす
・フローのチェック
・レジリエンスのチェック
これらをグループワークを中心に体験させる。

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自分には才能や強みはないと思っている人も少なくない
自分の強みを自分で認めることが難しい場合がある
強みを発揮することは、否定的な体験につながると予測す
る人が少なからず存在する
いわゆる「弱み」はどうするのか?
強み開発アプローチの課題点
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幅広い領域に適用可能
幼児教育、子育て
小学校~大学における教育
人材開発、キャリア支援
メンタルヘルス
自尊心やモチベーションを高める
他者の違いを認めることを促進する
実証的データを示すことで効果を明確に示せる
ポジティブな社会変革を可能にするアプローチ

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