マズローの自己実現的人間の特徴とは、 ①現実をより有効に知覚し、それと快適な関係を保っている。 ②自己、他者、自然に対する受容的態度 十分に事故に満足しており、それだけでなく、人を受け入れることが出来、 自然を愛している。 ③自発的な行動 ④物事に対して「自己中心的でなく、問題中心的である」こと。 ⑤「孤独、プライバシーを好み、欠乏や不運に対して毅然としている」こと。 ⑥文化や環境からの自立性、つまり流行やまわりの意見、時代の価値観に 振り回されず、自分で考え、判断する能力。 ⑦人生の基本的に必要なことを繰り返し新鮮に、無邪気に、畏敬や喜びをもって 味わうことができる。 ⑧しばしば神秘経験や至高経験をしていること。 ⑨共同社会感情 愛情が家族や仲間だけに限定されず深い人類愛にある。 ⑩深い対人関係 ⑪民主的性格構造 自分も人も人間として全く平等な価値や権利を持っている。 ⑫手段と目的の区別 手段に必要以上にこだわることがない。 ⑬哲学的で悪意のないユーモアのセンスがある。 不必要なこだわりがなく、自信があり、暖かい愛情を持っている。 ⑭創造性 ⑮文化に組み込まれることに対する反抗心 これは⑥とも重なる。 ⑯確固とした価値体系を持っている ⑰対立性、二分性の解決や欲望と理性の調和 ロジャーズやマズローらの人間性心理学の自己超越の概念を発展させて、個を超える領 域への精神的統合を重んじる心理学。 臨床的には一定の効果が確認されているが宗教、神秘主義であるという批判も根強い。 代表者はスタニスラフ・グロフ、ケン・ウィルバー。 以下は支持する立場からの宣言文的紹介。 トランスパーソナル心理学は、哲学であり、思想であり、学問であり、幸福論であり、 自分学であり、医療であり、すべての科学の理論(物理学や量子力学をも含む)と、実 証されたことを結集して、より高度な心理状態を達成しようというものであり、セラピ ーやワークをともなう。 孤立、不安、悩み、いらだち、身勝手さ、憎しみ、争い、奪いあい、殺しあい、とめ どもない精神破壊、環境破壊から、個人や人類が生き延びるためにはどうしたらいいの か。 近代的なアメリカ式個人主義は、すでに限界に来ており、その限界は越えなければな らないし、越えられるということである。 個人や国家が健やかに生きるために、資本主義も、社会主義も行き詰まってしまった 現代において、この思想以外に信じるべきものが、ぼくには他に見当たらないのだ。 これは、現代思想の最前線にあり、政治・経済の体勢だけでなく、人間の”心”をど うするかについて、普遍的で妥当な提案を含んでいる。 心のそれぞれの発達段階、心の層に応じたさまざまなセラピーの統合、というトラン スパーソナルの骨組みは、孤立した個人性という意識を越え、個を越えたもの(他者・ 共同体・人類・生態系・地球・宇宙、そしてブラフマン・神・空といった)との一体感 を回復するという意味できわめて宗教的でありながら、排他的でなく、他者による再実 験・反論・修正が可能でオープンな仮説であるという意味で科学なのだ。 トランスパーソナルの主張をまとめると、次の3つのポイントになる。 1.人間の成長は、自我の確立、実存の自覚、自己実現などの言葉で示される <人格=個人性=パーソナリティ>の段階で終わるのではなく、他者・共同 体・人類・生態系・地球・宇宙との一体感・同一性(アイデンティティ)の 確立、すなわち<自己超越>の段階に到達することができる。 2.人間の心は生まれつき、構造的にそうした成長の可能性をもっている。 3.その成長は適切な方法の実践によって促進できる。 周囲に流されることなく、自ら判断し、自分の命の、かけがえのないすばらしさ、愛 しさを知っているからこそ、他者の命をも尊重することのできる、理性、批判力、独立 性、自律性といった、個人的なもっとも正当で生産的な面を充分に包み込みながら、そ れを越えていくこと、”自己放棄”ではなく”自己確立”を経たうえでの”自己超越” (トランスパーソナル)である。 いい人にならなければならない、なりたい、なろうと思うだけではなれないのは、エ ゴイズムが、知識、理性、意識の問題ではなく、人間の魂の奥深いところの問題、いわ ば「深層心理」の問題であるからではないのか。とすれば、いかにして、心の深層に深 く根を張ったエゴイズムを絶ち切り、枯らせてしまうことができるのか、しかしそれは 、他人の話しではなくまず自分のことにおいてなのだ。このことこそが、ずっとぼくが 抱え込んできた問題なのだ。 トランスパーソナルな人たちは、エゴイズムの根深さ、深層性を十分認識したうえで 、それでも人間の心は構造的にエゴイズムを越えることができるようにできていると主 張する。 キリスト教の”原罪”、仏教でいう”無明”の再発見であったといってもいい。その 点で「人間は根本的に罪深いもので、原罪は人間の力では解決できない」とする正統キ リスト教よりも、「闇がどれほど深くても光が照ったとき、たちまちにしてなくなるよ うに、永遠の昔からの無明も悟ったとたんに克服される」とする仏教思想に近いのだ。 トランスパーソナルは、西洋科学(心理学)と東洋宗教(特に禅)の統合という面を もっている。最終的に目指す心理状態は、悟りなのだ。 アメリカでは、禅は、鈴木大拙の英文の著作によって知識として早くから知られてい た。それに加えて、臨済宗系は西海岸の千崎如幻や東海岸の佐々木指月らの活動、曹洞 宗系は鈴木俊隆のサンフランシスコ禅センターや前角博雄のロサンジェルス禅センター における活動などによって、坐禅の実習が広範囲に行われるようになっていた。カリフ ォルニアでは、神父、牧師たちが座禅をしているという。 般若心経の最初に出てくるように、仏教が生み出したものの中で禅が何よりも重視し ているのはキリスト教と同じく言葉である。 形は空と異ならず 空は形と異ならず 形はまさしく空であり 空はまさしく形である 二千年後、西洋の物理学がこの説に同意した。 科学的な宇宙の考え方は量子力学と、エネルギーと物質を別の物と考えることに疑問 を呈したアインシュタシンの相対性理論によって、根本的に変わった。宇宙が論理的に 行動する微細な固形物で出来上がっているという都合のよい考え方はこっぱみじんに吹 き飛んだ。粒子は別個の存在ではなく、互いに関連している。世界は相互に関連した出 来事の連続であり、とぎれることのない動的な総合だ。科学者は今、観察者ではなく参 加者になった。そして物理学と神秘主義には、はっきり平行線に達し、ひとまわりして 元に戻った。ぼくの性格も、ひとまわりして元に戻った。 「(現代物理学の)発見には強力な認識がひそんでいる。すなわち、これまで気がつか なかった精神の力を認識することで《現実》が形づくられるのであり、その反対ではな いということである。その意味で物理学の原理と、悟りの原理である仏教の原理に一線 を画せなくなる」 誤解を恐れずに端的に言うと、トランスパーソナルとは、それぞれの心理の成長段階 に適した心理的処方をあたえる事により、個人が個人意識を越え宇宙のふところに深い 安らぎを見いだした心境、<宇宙意識>=個と宇宙の一体感(仏教でいう悟りの境地) にまで、誰でも到達することができるという体系なのだ。 そして処方を与えるのは、自分自身であるから、自分を突き詰めて行くことこそが、 最大の主題になる。 知らず知らずのうちに自分の内面に押しやられてしまった面も含めて、 自分自身を認め、自分らしく生きる… それが、ユングの言うところの「自己実現」です。 この考え方は、1960年代の米国で急速に支持されるようになります。 なぜなら、当時のアメリカでは、 大学紛争や反戦運動、ウーマン・リブ運動などが盛んとなり、 人間性の解放(すなわち、社会的規範による抑圧からの解放)が 叫ばれる時代だったからです。 このような流れで生まれたのが、「人間性心理学」という新しい学問。 代表的な心理学者としては、 カール・ランソム・ロジャーズやアブラハム・マズローらがいます。 ●ロジャースの代表的な理論 「人間の変容は、来談者と治療者の出会いによって達成される」 ●マズローの代表的な理論 「人が生まれつき持っている能力を発揮するのが自己実現である」 トランスパーソナル心理学の誕生 ユング心理学の理論、そして、ロジャースやマズローらによる 「人間性心理学」の影響を受けて誕生したのが、 「トランスパーソナル心理学」です。 トランスパーソナルとは、読んで字のごとく、 「個を超えた」という意味。 「個を超える」という言葉には、次の2つの意味があります。 ◆水平方向のつながり 対話を通じて、性や民族の違いを超えて 水平方向につながりを広げていこうという考え方。 ◆垂直方向のつながり 瞑想やヨガ、禅修行やシャーマニズムといった内的な体験を通じて、 自分の身体や感覚に直接アプローチすること。 言葉や意識の働きを超えて、無意識でつながろうというアプローチ法。 …つまり、横にも縦にも広くみんなとつながろうぜ!! という考え方ですね。(ちょっと乱暴な言い方ですが…) 垂直方向につながることは、神話や古典文学といった 古くから伝わる「イメージの世界」を大切にすることにも つながっていきます。 これはつまり、ユングが提唱した 「集合的無意識」にも関係する考え方ですよね。 トランスパーソナル心理学の特徴 トランスパーソナル心理学の最大の特徴は、東洋的瞑想を重視したこと。 具体的な方法としては、瞑想やヨガ、禅修行、気功法、太極拳…等々。 これは、「垂直方向のつながり」にカテゴライズされ、 言葉を介さずに自分自身の身体や内面に直接アプローチする方法です。 実は、この点については、 ユングとはちょっと考え方が違っているところ。 ユングは、このように言葉を介さずに内面にアプローチする方法は あまり好みませんでした。 なぜならば、意識的に考える力や、 他者と対話する力を弱めてしまうからです。 しかし、ユングが活躍した時代と比べて、 急激に西洋的な合理主義思想が拡大した現代にあっては、 水平方向に浅いつながりは拡大しつつも 垂直方向の深いつながりは弱くなっていく一方です。 こうした状況に警鐘を鳴らす学者も多く、 東洋的思想を重要視する声も多くなっているのです。 加えて、ユングの時代よりも東洋的な思想に関する研究が進み、 人々に受け入れられやすくなっていることもまた事実。 トランスパーソナル心理学が東洋的な思想を大胆に取り入れている背景には、 このような「時代の変化」も大きく影響しているようですね。
2016年10月1日土曜日
トランスパーソナル
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