2016年9月3日土曜日

マインドフルネス



今、世界が本気で取り組み始めたストレス対策。その背景にあるのは、ストレスが原因とみられる心と体の病の急増です。第2回では、最新科学によってその効果が裏付けられた誰にでもできる画期的なストレス対策を、世界の最前線から報告しました。

心をむしばむストレス、その正体として浮かび上がってきたのがストレスホルモンの「コルチゾール」です。長く続くストレスでコルチゾールが多量に分泌されると、脳の海馬で、神経細胞の突起を減少させることが分かってきました。海馬は、記憶を司り感情に関わる部位。損傷すると、認知症やうつ病につながる可能性が見えてきたのです。

こうした心の病を防ぐため、注目されるのが“最新のストレス対策”です。
認知行動療法をストレス対策に応用した「コーピング」。そして、瞑想をベースに生まれたプログラム「マインドフルネス」。世界中で注目される2つのストレス対策をご紹介します。

コーピングを始めてみよう!

番組内で臨床心理士の伊藤絵美さんに教えていただいた『コーピング入門』をご紹介します。
代表的なコーピングの手法です。

(1)ストレスに対してどんな気晴らしや対策を行えば効果的かリストアップします
「できるだけ多くあげる」ことが大切です。100個を目標に頑張りましょう。

(2)実際にストレスがかかった時、それがどういうストレスなのかモニターします
弱いストレスか強いストレスか。そして、自分の体にはどのような反応として現れたか、例えば心臓がドキドキする体の反応か、気分が沈む心の反応か、客観的に観察します。

(3)そのストレスに見合った気晴らしや対策を行います
体に反応が現れることが多い「頑張るストレス」の時には、音楽を聴いてリラックスするなど、気分をしずめるものが効果的と考えられています。
逆に、心に反応が現れることが多い「我慢するストレス」の時には、カラオケで盛り上がるなど、気分を上げるものが効果的と考えられています。

(4)その結果、ストレスが減ったかどうかを自分で判断
まだストレスを感じていたら、さらに対策を続けたり、別の対策に切り替えたりします。

このように、自らのストレスの観察、そして対策を、意識的、徹底的に繰り返すことが大切です。

※「ストレス対策を100個もリストアップするなんて難しい!」と感じますよね。
そのコツは「行動するコーピング」だけではなく「認知するコーピング」も取り入れること。
ストレスが下がる場面や行動を『イメージ』するだけでも立派なストレス対策です。
伊藤先生が指導した男性の100個のリストを参考にして下さい。

マインドフルネスを始めてみよう!

番組にも出演した早稲田大学の熊野宏昭教授による『マインドフルネス入門』をご紹介します。
最初は、10~15分を目安に始めます。

(1)背筋を伸ばして、両肩を結ぶ線がまっすぐになるように座り、目を閉じる
脚を組んでも、正座でも、椅子に座っても良いです。「背筋が伸びてその他の体の力は抜けている」楽な姿勢を見つけて下さい。

(2)呼吸をあるがままに感じる
呼吸をコントロールしないで、身体がそうしたいようにさせます。
そして呼吸に伴ってお腹や胸がふくらんだり縮んだりする感覚に注意を向け、その感覚の変化を気づきが追いかけていくようにします。
例えば、お腹や胸に感じる感覚が変化する様子を、心の中で、「ふくらみ、ふくらみ、縮み、縮み」などと実況すると感じやすくなります。

(3)わいてくる雑念や感情にとらわれない
単純な作業なので、「仕事のメールしなくちゃ」「ゴミ捨て忘れちゃった」など雑念が浮かんできます。そうしたら「雑念、雑念」と心の中でつぶやき、考えを切り上げ、「戻ります」と唱えて、呼吸に注意を戻します。
「あいつには負けたくない」など考えてしまっている場合には、感情が動き始めています。「怒り、怒り」などと心の中でつぶやき、「戻ります」と唱えて、呼吸に注意を戻します。

(4)身体全体で呼吸するようにする
次に、注意のフォーカスを広げて、「今の瞬間」の現実を幅広く捉えるようにしていきます。
最初は、身体全体で呼吸をするように、吸った息が手足の先まで流れ込んでいくように、吐く息が身体の隅々から流れ出ていくように感じながら、「ふくらみ、ふくらみ、縮み、縮み」と実況を続けていきます。

(5)身体の外にまで注意のフォーカスを広げていく
さらに、自分の周りの空間の隅々に気を配り、そこで気づくことのできる現実の全てを見守るようにしていきます。
自分を取り巻く部屋の空気の動き、温度、広さなどを感じ、さらに外側の空間にも(部屋の外の音などに対しても)気を配っていきます。それと同時に「ふくらみ、ふくらみ、縮み、縮み」と実況は続けますが、そちらに向ける注意は弱くなり、何か雑念が出てきたことに気づいても、その辺りに漂わせておくようにして(「戻ります」とはせずに)、消えていくのを見届けます。

(6)瞑想を終了する
まぶたの裏に注意を向け、そっと目を開けていきます。
伸びをしたり、身体をさすったりして、普段の自分に戻ります。

うつ病などの治療を受けている方は、自分の判断で始めず医師に相談してください。




マインドフルネスとは「今自分に起こっていることを、判断や批判なくそのまましっかり認識すること」=心の整った健全な状態であり、デフォルトでこの心の状態に自然になるようにするための訓練法として、最も効果的なのがマインドフルネス瞑想だ。
アップルのスティーブ・ジョブスが瞑想実践者だったのは有名だが、グーグル、インテル、フォード自動車、最近ではイギリス国会などでも取り入れられるようになったマインドフルネスや瞑想は、世界的にも自己管理の王道となりつつある。健康やビジネス上での利点が科学的にも次々と確認されるようになった。
ポイントとしては、瞑想といっても偏った宗教的な要素がないこと、そして忙しいビジネスマンでも手軽に実践できること。そこで、興味はあるけどどう始めるのがよいか、と迷っている方へ、よくある質問を中心にまとめてみた。

【まずは初心者向けベーシック情報】

姿勢は?: 呼吸が楽にできて、一定時間止まってくつろげる姿勢であれば何でもOK。立ったままでも、座ったままでも。
時間と頻度は?: GoogleでマインドフルネスとEQのプログラムSIY(Search Inside Yourself)を創り出し、世界で注目されているチャディ・メン・タンは、「ひと呼吸でも、数分であっても、あなたができる時間であればそれがベストな時間」と言っている。はじめは、がんばりすぎず無理のない範囲で行い、気に入ったら時間を延ばせばよい。頻度についても同じく、気が付いたらちょこちょこ気分転換のつもりで。
場所は?: 瞑想中に家族や同僚に見られて、怪しまれたらどうしよう――多くの人がこの不安を持っているようだ。人知れず自宅で静かに、というのが便利で理想的ではあるが、それも難しい場合、電車やバスでの移動中、カフェ、電車や信号の待ち時間、会社の席でPCの画面や資料をうつむいて読むふりをしながら、など。参考にして自分の環境で探してみよう。
やり方は?: 今すぐ、そのままの状態で立ち止まり、意図的に自分に注意を向けてみよう。目は閉じても、うつむいた状態でもよい。うつむいた状態は、人から見られても怪しまれないというメリットあり(笑) 次の瞬間も、同じく自分に注意を向ける、そしてまた次の瞬間も、という風に。これを少しの間続けるために、今自分の中で起こっている呼吸を注意の対象としてみる。まずはこれだけで十分。(ビデオインストラクションはこちら
そう、今このブログを読むのを30秒だけやめて、上記をトライしてみよう。それだけで、あなたはすでにマインドフルネス瞑想経験者だ。

【より楽しんで継続するためのコツ】

心地よさや自由をのびのび味わう: マインドフルネス瞑想の最中は、どこにも行かなくていい、何もしなくていい、誰かになる必要もない。ただ、あるがままでいられる何より自由な時間だ。この時間だけでも、先の計画や心配事から自分を解放しよう。楽に呼吸を続け、今の自分とともにある自由さ、くつろぎを体感できたらさらに続けたくなる。はじめからストイックに修行だと思わないほうがいい。
1日を振り返って、瞑想の影響・価値を考える: 立ち止まって瞑想した(あるいはしなかった)ことがどう影響したか、振り返ってみよう。「あれ、今日はなぜか苦手な上司ともうまく話せた」「あれ、今日はなぜかイライラしがちだった」など。そして続ける価値があると思えば、続けたり深めたりすればよいし、そうでなければ無理に続ける必要はない。自発的に、自由に行うこと。
雑念がやってくることも歓迎して楽しむ: 呼吸から意識が逸れて「昨日の○○さん、なんであんな態度だったんだろう?」「今日のランチなににしよう?」など思いが「今・ここ」から外れることももちろんOKだ。雑念が浮かぶたびに「しまった!」「いけない!」とダメ出しをしていると、瞑想は苦しいものになって、続けるのもいやになるだろう。それらの思いは何であれ、あなたの「今・ここ」に訪れてくれた訪問者として迎え入れ、それからまた呼吸に意識を戻せばよい。このニュートラルな感覚は、日常生活やビジネスでも冷静さや信頼感を創り出す、重要な基盤となってくれる。
日々の忙しさから、何にもとらわれずくつろぐ時間。責任・肩書・行動・功績とは無縁のあるがままの自分でいる時間。そんな時間がいかに心に滋養を与えよりよい選択を促すかは、数千もの学術論文がなくとも、常識的にわかるだろう。
運動で心身を整えるのがリーダーの間で当たり前となったように、マインドフルネス瞑想もこれからの自己管理法として浸透していくだろう。あなたもぜひ、体験してみてはいかがだろうか?

木蔵(ぼくら)シャフェ君子  一般社団法人マインドフルリーダーシップインスティテュート理事
近ごろ耳にすることが多くなった「マインドフルネス」。瞑想に近いものですね。お気づきとは思いますが、メディアで取り上げられる頻度が増しているのは、その有効性を示す研究結果が次々に見つかっているためです。ニューエイジっぽく感じるかもしれませんし、人によってはインチキ心理学だとすら思っているかもしれませんが、「マインドフルな状態」でいると、人生のあらゆる面を豊かにできることを裏づける証拠は確かにあるのです。また、この状態に到達するのには、あぐらのような「蓮の花のポーズ」で何時間も過ごす必要はありません。以下に、知っておきたい基礎知識を説明します。


マインドフルネスって結局なんなの?


マインドフルネスにはたくさんの類義語があり、自覚、気づき、集中、覚醒などと言い換えることもできるでしょう。では反対語はというと、単にマインドレスネス(思慮のないこと)だけではなく、注意散漫、ぼんやり、集中力欠如なども当てはまります。
マインドフルネスという言葉は、行為を指して使われることもあれば、精神状態を指す場合もあります(適切な言葉がほかにないのです)。例えば、集中力を研ぎすます脳のトレーニングとして、マインドフルネス瞑想という「行為」があります。これには大抵の場合、いつもより呼吸を意識するという方法をとります。こうして鍛えた脳は、瞑想後も長い間、マインドフルな「状態」でいられるようになります。マインドフルネスの状態にある時は、自分のまわりで起こっていることに、意識を完全に集中できています
なお、後述するように、マインドフルネスの実践には、瞑想のほかにもいくつか別の方法があります。また、瞑想にもたくさんの種類があります。両者は密接な関係を持ちながらも、同じではありません。
マインドフルネスとは、単純に言えば、その一瞬に全力を傾けること、と考えることができます。MITマインドフルネスセンター所長を務めるジョン・カバットジン博士は上の動画の中で、マインドフルネスについて、「今という瞬間に、余計な判断を加えず、(中略)自分の人生がかかっているかのように真剣に、意識して注意を向けること」と定義しています。
シンプルな定義だと思うかもしれませんが、現代の混沌とした世界では、何かに100%没頭することなど容易ではありません。それはつまり、同僚から同じ話を聞かされて、もう3度目になるという時でも、ほんのわずかでさえ気をそらさずに聞き入ることや、皿洗いや「バス停までの道」のような身近な状況でも五感をフル稼働させることを意味するのです。
マインドフルネスは、仏教の教えに根ざしたもので、悟りを開くために大変重要なものだと考えられています。英語版のWikipediaでは、次のように説明されています(太字は筆者によるものです)。

悟り(菩提)とは、欲、憎悪、迷い(無明パーリ語ではmoha)を克服し、放棄し、心から取り去った状態のこと。なかでもマインドフルネスは、(特に、今という瞬間の)物事の本質に対する気づきであり、迷いへの解毒剤であり、ある種の「力」(パーリ語ではbala)であると考えられている。こうした能力が特に力を発揮するのは、今起きていることに対する明確な理解(訳注:正知、もしくは「自己への気づき」)と相まった時である。

同じ状態を、西洋心理学のレンズを通して、新しく、非宗教的に定義し直すこともできます。ハーバード大学教授で、心理学が専門のエレン・ランガー博士は、著書を丸一冊使って、これとは微妙に異なる西洋心理学的な観点からマインドフルネスを説明しています。ランガー博士によるマインドフルネスの定義には、重要なものとして以下のような属性が含まれています。

  • 常に新しいカテゴリーを創造する:マインドフルネスな状態であれば、旧来の分類方法やレッテルにとらわれることなく、状況や文脈に注意を払い、新たな特徴を見出すことができます。例えば、レンガを単なる建材と見るのではなく、ブックエンドや武器、ドアストッパーなど、いろいろな利用法を思いつくことができます。

  • 新たな情報を積極的に受け入れ、物事をさまざまな視点から捉える:マインドフルネスな状態は、カテゴリーを創造できるだけでなく、常に新たな情報を受け取り、新たな可能性に対してオープンになることも意味します。例えば、あなたとパートナーはいつも自分のやり方にこだわって、同じことで喧嘩ばかりしているかもしれません。けれども、相手の視点に対してオープンになることで変化が生まれる可能性があります。

  • 結果よりも過程を重視する:マインドフルネスな状態は、結果についてあれこれ心配するのでなく、ひとつずつのステップに意識の焦点を当てる状態です。例えば、テストの出来を心配するより、その教科を本当の意味で学ぶことです。

つまり、マインドフルネスとは、すべての経験に焦点を合わせ、より意識的になることなのです。ウィリアム・ブレイクの詩「無垢の予兆」(Auguries of Innocence)の冒頭の一節には、このような注意深さがうまく表現されていると個人的に思います。

一粒の砂に世界を求め
野の花に天国を見出す
掌の中に無限を捉え
ひと時のうちに永遠を築く

マインドフルネスの効能って?


「だから何?」と思う人もいるでしょうが、上の定義からもうかがえるように、マインドフルネスを高めれば、集中力が増し、創造性や幸福感、健康、リラックス感が高まり、もっと自分をコントロールできるようになる可能性があります。かけがえのない「この瞬間」に、より深く感謝できるようにもなるでしょう(この瞬間は、誰にでも等しく与えられています。これってスゴいことですよね)。ではここからは、マインドフルネスに関する最新の研究の成果をいくつか見ていきましょう。

  • 記憶力と学業成績を向上させる(心理学関連ブログ「PsyBlog」)。この研究では、学生に注意力を鍛える訓練を行ったところ、集中力の向上(もしくは「上の空の状態」の減少)、短期記憶の向上といった効果が見られました。GRE(大学院進学適性試験)のような、対策が難しいとされる試験の成績すら良くなったそうです。

  • 減量や健康的な食生活に役立つ。>マインドフルネスの考え方を食事に当てはめれば、五感をフルに使いながら、一噛み一噛みを意識してゆっくり食べることになります(米ハーバードメディカルスクール、米誌『Womens Health』)。この食べ方を実施した被験者たちのカロリー摂取量は、空腹時でさえ、対照グループに比べて低く抑えられました。

  • 意思決定能力を高める。いくつかの実験によって、マインドフルネス瞑想を実施した人や、もともと性格的にマインドフルネスの状態に近い人は、「サンクコストの誤り」を免れているという相関関係が確認されました。サンクコストの誤りとは、それまでに費やした時間やエネルギーを惜しんで、先の見込みのない交際や仕事にしがみついてしまう傾向を言います(英国心理学会のブログ「BPS Research Digest」)。

  • ストレスを減らし、慢性的な健康問題の改善を助ける。20の実証研究を対象にしたメタ分析によって、マインドフルネスは、慢性疼痛、ガン、心臓病などの患者の心身の健康をいずれも改善させることが明らかになりました(専門誌『Journal of Psychosomatic Research』)。

  • 免疫力を高め、脳に好ましい変化をもたらす。実験協力者に8週間にわたってマインドフルネス瞑想を指導し、その前後に脳の活動を測定した研究があります(専門誌『Psychosomatic Medicine』)。

  • これまでにわかっているマインドフルネス瞑想の脳への効能が、すべてもたらされる。集中力や創造性の向上、不安やうつ病の軽減、人を思いやる心の向上など...。ここに挙げたのはほんの一例です。

マインドフルネスを実践するには?


残念ながらマインドフルネスは、スイッチを押せばいきなり切り替えられるようなものではありません。ある日を境に、それからの人生をずっとマインドフルネスの権化として生きていけるものではないのです。けれども、徐々に高めていくことはできます。
集中力を高めるには、気が散らないように自分で気をつけて、マルチタスクな仕事術を真似しない、という方法もあります。でも、気が散るのを助けてくれるツールは世にごまんとあり、その助けを借りたって良いのです。マインドフルネスを実践するには、どんなに忙しくても、どんなにストレスのたまる状況でも、いつも意識を研ぎ澄ましていなくてはいけないのですから(実際そういう時は、マインドフルネスがもっとも役立つ場面でもあります)。
まず手始めとして、どうしてもぼんやりしてしまう日でもすぐ我に返れるよう、あらかじめきっかけや手がかりを作っておくと良いでしょう。例えば食事中であれば、フォークを置くたびに、「一噛み一噛み味わって食べる」という目標を思い出すようにしましょう。職場でなら、「1時間ごとの時報」などのリマインダーを設定して、ちょっと休憩をはさむと良いでしょう。
子どもの相手をする前にひと呼吸置けば(相手が大人でも同じことですが)、相手との関係について、もっとマインドフルでいられるでしょう。ほかの実践方法を見ても、感謝の心を持つ、物事をコントロールしようとしない、など、意外に簡単なものがあります。
上に紹介した研究の中に、大学生にマインドフルネスの訓練を行ったら記憶力や学業成績の向上が見られたというものがありましたね。この実験で用いられた訓練には、以下の6つのステップが含まれていました。

  1. 背筋を伸ばして座り、足を組んで、視線を下に向けます。
  2. 自然に浮かんでくる思いと、人為的な考えとを区別します。
  3. 繰り返し過去を思い出したり、未来への不安で気が散るようなら、それを最小限に抑えるために、こう考え直してみます。「過去も未来も、現在の私の心の中の想像にすぎない」。
  4. 瞑想中は、ちょうど船の「」のように、呼吸が集中をつなぎ止めてくれます。
  5. 息を吐くたびにひとつ数を数え、21まで数えたらまた1に戻ります。
  6. 思いが浮かんでくるのを無理に抑えようとせず、心を自然に任せます。

この一連の手順は、マインドフルネス瞑想として知られているので、ご存知の方もいるかもしれません。マインドフルネスを育む最高の方法のひとつです。これは一種の脳のエクササイズで、普段の生活を送りながらでも実践できます(続けやすくするひとつの戦略は、シャワーや犬の散歩など、毎日の日課の最中にこの訓練を行うことです)。
最後にひとつ注意事項を。マインドフルネスの実践はとても有益ですが、心を自然に任せたほうが良い時もあります。米紙『ニューヨーク・タイムズ』は、創造性や洞察力のためには、ぼんやりしたり空想にふけったりすることが必要である可能性を紹介しています。またこの記事によると、高度にマインドフルネスな状態は、「潜在的学習」(無意識のうちに、新しいスキルや習慣を学ぶこと)における効率の低さと相関している可能性があるようです。

こうした残念な研究結果もありますが、俗事と精神世界のどちらにも偏らない「中道の教え」を説いている仏陀であれば、マインドフルネスを利用すべき時と放棄すべき時があるということにも、きっとうなずいてくれるでしょう。深遠な真理を発見したり、試合や試験で成功したりするには、マインドフルネスが有効ですが、そんなことは忘れて、万物の中に心を解き放つべき時もあるのです。

この考え方に賛同すると決めたなら、あなたにとって必要なのは、意識の集中と精神の休息の時間配分について、自分の中で最適なバランスを見つけることです。




2016年9月1日木曜日

ポジティブ・サイコセラピーの効果

http://positiveinnovation.org/files/pdf/200909_hirai.pdf

ポジティブ心理学を活用した
プログラム開発の実際
~強み開発アプローチの実践例から~
1
本発表の概要
強み開発アプローチの紹介
強みとは何か
強み開発の意義
強みを発見するツール
実践例の紹介
Azusa Pacific Universityにおける強み開発アプローチの展開
ポジティブ・サイコセラピーの効果
日本における強み開発セミナーの紹介
強み開発アプローチの今後の課題と可能性
2
人間は弱みや問題点を克服しようと努力するよりも、
すでにある強みや才能を活かそうとする方が、より多
くを得ることができる (Clifton & Harter, 2003)
弱み克服モデルから
問題点や弱みを発見し、それを解決・補強する
失敗を予防する
強み活用モデルへ
強みを発見し、それを活かす
成功を促進する
強み開発アプローチの基本的な考え方
3
1900年以降の心理学の研究テーマの数から
ポジティブとネガティブな側面のバランスを取り戻す
速読法訓練の成果の違いから
同じ訓練でも強みを活かすと成果が飛躍的に伸びる!
ギャラップ社によるTop Achievers (非常に成功した
人々)の研究から
→成功者の共通点は、強みの発見と育成!
なぜ強みにフォーカスするのか
4
能力としての強み
例:ストレングス・ファインダー
人格としての強み
例:VIA-IS
上記の2つを発見・育成することで、個人の強みが向上
し、ひいてはチームや組織の強みの発揮にもつながってい
く(Schreiner & Hulme, 2009)
強み=(才能+エネルギー)×(知識+スキル)
人格
能力 個人の成長
組織の成長
強みとは?
5
ストレングス・ファインダー (Strength Finder)
34の才能から、5つのとっておきの才能を発見する尺度
共感性、目標志向、分析思考、社交性、公平性、調和性、など
尺度としての高い妥当性と信頼性
20カ国以上、400万人以上の人々に利用されてきた
アメリカでは400以上の大学で利用されている
日本語版は、「さあ、才能(じぶん)に目覚めよう―あなた
の5つの強みを見出し、活かす」(日本経済新聞社)を購
入することで、オンラインで受検可能
www.strengthsquest.com
強みを発見するツール
6
VIA-IS (Values In Action-Inventory of Strength)
Chris PetersonとMartin Seligmanによって開発
人間の様々な人徳と強みを6つの領域と24のカテゴリーに整
理
知恵と知識、勇気、人間性、正義、節度、超越性
質問紙は240項目からなり、オンラインで受検可能
http://www.viacharacter.org/
ほとんどの文化で尊重されている徳・強みを抽出
それ自体が精神的・道徳的に尊重されている
強みを発見するツール
7
MBTI (Myers-Briggs Type Indicator)
ユングのタイプ論に基づいて開発された性格検査
4つの指標(外向vs内向、感覚vs直観、思考vs感情、判断
的態度vs知覚的態度)をもとに、性格の特徴を16のタイ
プに類型化
24カ国語に翻訳、45カ国以上で利用され、世界で最も普
及している性格検査と言われている
本人の強みを発揮しやすい環境や仕事・活動内容につい
て有用な情報を提供
http://www.mbti.or.jp/
強みを発見するツール
8
強みを発見するツール
対話による強みの発見
学生時代に好きだった科目は?
子どもの頃夢中になれた活動は?
これまでの中で自分の心をわくわくさせてくれた体
験は?
重要な他者(親や友達、先生など)があなたについ
て褒めてくれたことは?
逆境を乗り越えることを助けてくれた力は?
9
Laurie Schreiner, Ph.D. & Eileen Hulme, Ph.D. による報告
大学のカリキュラム(オリエンテーション、ゼミ、インター
ンシップ、教授法など)に強み開発アプローチを適用
ストレングスファインダーを活用した「ストレングスクエス
ト」プログラム
www.apu.edu/strengthsacademy
実践例1: Azusa Pacific University!"#$
%&'()*+,-./0
10
強み開発のステップ
1. 強みを発見する
2. その強みを周りの人と確認・共有する
3. 知識とスキルを学び、エネルギーと努力を費やす
ことで、強みを育成する
4. 強みを新しい状況や難しい状況に適用する
5. 自分の持っている他の強みや、他人の持っている
強みを組み合わせることで、卓越した結果を創り
出す
強みの発見から強みの開発へ
11
1年生
強み開発アプローチの哲学について紹介する
新入生全員にストレングスファインダーを受検してもら
う
1年生のゼミでストレングスファインダーの結果を使って
自己分析を行う
強みを活かすためのアドバイジングと目標設定のための
個人セッションを設ける
学習チームを編成し、課題に多様性を持たせる
大学における強み開発アプローチの適用例
12
2年生
強みを活かした専攻およびキャリアの選択
教員との共同プロジェクトの機会
3年生
インターンシップで実際に強みを活用する
学生リーダーとして下級生にアドバイジングを行う
4年生
強みを活かした就職活動
エントリーシートや面接で強みをアピール
大学における強み開発アプローチの適用例
13
新しい教員は全員ストレングスファインダーを受検し、強み
開発アプローチによる研修への参加が推奨される
教員が自分の強みを活かした授業の計画と実施ができるよ
うな研修が実施されている
職員がお互いの強みを理解し、チームとしても強みを発揮で
きるよう、強み開発アプローチの研修が行われている
大学における強み開発アプローチの適用例
14
質的な効果測定
自分の強みへの理解が深まる
自尊心が高まる
成功したいというモチベーションが高まる
自分の未来に対しての自信が高まる
強みをより頻繁に育て、活用するようになる
他者理解が深まり、対人関係が向上する
どのような効果があるのか?
15
量的な効果測定
強み開発アプローチによる授業と従来の授業を比較
一学期の前後に質問紙を配布して、点数の変化を比較
統計的に明らかな違いが見られた
試験の成績、スキルの獲得、学習へのコミットメント
(Cantwell, 2005)
勉強に対する自己効力感 (Gomez, 2008)
大学生活に対する満足感、授業に対する満足感
(Schreiner, 2008)
どのような効果があるのか?
16
実践例1の特長
強みの発見のみに終わらず、強みの開発を含めてプロ
グラムをデザインした点
1クラスや1学期のみでなく、長期的なプラン(1年
生~4年生まで)を組み立てた点
学生にとどまらず、職員や教員も含めて、大学全体で
取り組んだ点
効果を質的分析のみでなく、数量的にも明確化した点
17
Martin Seligman, Tayyab Rashid, & Acacia Parksによっ
て開発
うつ病を改善するプログラム
インターネットを利用したセルフプログラム
喜びや感謝、強みや生きる意味など、ポジティブ心理学の
テーマにそったセッション
実践例2:ポジティブ・サイコセラピー
18
目的:うつの症状や原因に焦点を当てるのではなく、生活
の中の肯定的な側面に注意を向け、クライアントが既に持っ
ている強みや資源を活用できるように援助し、うつ病を改
善すること
方法:ポジティブ心理学のテーマに基づいた講義とワーク
を、インターネットを通して受講する。セッション数は14
セッション。おおよそ1週間に1セッションを進めていく。
ポジティブ・サイコセラピーの内容
19
強み
VIA-ISを受検し、とっておきの強みを5つ発見する。その後、
それらの強みを実際の生活により頻繁に活かしていく方法を書
き留める
感謝
夜眠る前に、その日の出来事でよかったことを3つ書きだし、
それらがなぜ起こったのかについての理由を考えてみる
充分に味わう(Savoring)
いつもなら意識せずさっとやってしまうこと(食事やシャワー
など)を一つ選び、そのことにゆっくり時間をとって味わって
みる。その後、どのように感じ方が違ったかを記述する。
使用されるテーマとワークの例
20
研究1:軽度~中程度のうつ症状をもつ大学生を対象にし
たグループPPT
40人の大学生が対象
プログラムを受けなかった学生に比べて、受けた学生は、うつの症
状の軽減および人生への満足度の増加が見られた
プログラムを受けた学生は、1年後でもうつ症状が引き続き軽減して
いた

ポジティブ・サイコセラピーの効果
21
研究2:うつ病を煩うクライアントへの個人PPT
対象はうつの治療にカウンセリングセンターに訪れたクライアント
46名
3グループのうつ改善状況を比較
ポジティブ・サイコセラピー
典型的な個人セラピー
典型的な個人セラピー+抗うつ薬
PPTをうけたクライアントが、他の2つの治療方法に比べて、最も
大きな変化(うつ症状の軽減および人生への満足感)がみられた

実践例2の特長
問題を直接には取り扱わず、ポジティブな側面に焦点
を当てるモデルの有効性を示した点
対面ではなく、インターネットを使ったセルフセラ
ピーという新しいセラピーの形を提案した点
セラピーを受けなかったグループとの比較のみでな
く、典型的なセラピーおよび薬物療法との効果の比較
も行った点
23
一般社会人を対象としたワークショップ
これまで23名を対象に2回実施
強み、フロー、レジリエンスの3つのテーマについて、講義
とグループワークを使用しながら、自己理解を深める
セミナー修了後は、ワークブックを配布し、日常における学
びの実践を促進
セミナーの前後および一ヶ月後に人生の満足度と仕事への
満足度に関する質問紙を配布して効果検証

実践例3:日本における実践
「ポジティブ心理学による強み開発セミナー」
24
実践例3:日本における実践
「ポジティブ心理学による強み開発セミナー」
主要なテーマは、
・強みを知り、活かす
・フローのチェック
・レジリエンスのチェック
これらをグループワークを中心に体験させる。

25
自分には才能や強みはないと思っている人も少なくない
自分の強みを自分で認めることが難しい場合がある
強みを発揮することは、否定的な体験につながると予測す
る人が少なからず存在する
いわゆる「弱み」はどうするのか?
強み開発アプローチの課題点
26
幅広い領域に適用可能
幼児教育、子育て
小学校~大学における教育
人材開発、キャリア支援
メンタルヘルス
自尊心やモチベーションを高める
他者の違いを認めることを促進する
実証的データを示すことで効果を明確に示せる
ポジティブな社会変革を可能にするアプローチ

2016年8月13日土曜日

幸せの定義

幸せいっぱいの人が持つ共通点はあるのか、お金持ちといわれる人がそうなのか、
いつもニコニコと笑い周りに喜びを与える人なのか、私も含め、古い時代には
働くことで収入が増え、ほしいものが変えることが幸せだ、という時代もあった。
しかしながら、幸せと満足感は、1つしかないわけではない。特に最近の状況を
知れば知るほど、その感じを強める。
幸せとは遺伝的特徴と、気持ちと、性格と、感情と、人生におけるさまざまな
事情や状況が合わさって最高の時を迎えた状態なのであろうが、それが何なのかは
心理学者も含めよくわかっていないようだ。

だが、少なくとも幸せが「どんなふうに見えるのか」は研究からかなり明らかに
なっているという。人によって限界がまちまちとはいえ、個人的な幸せの限度を
最大限に広げるためにできることがある。
具体的には、たっぷり運動をして(内心で目標を定めておくと効果がアップ)、
十分な睡眠をとり、心の知能指数(EQ)を育み、モノではなく経験にお金を費やすこと
から始めてみるのがよいとされる。
1つには、心理学者でポジティブ心理学の提唱者であるマーティン・セリグマン氏が
編み出した「PERMA」という概念がある。これは以前にも紹介しているが、PERMAは、
「持続的幸福」の実現要素と言われている。
Positive Emotion(ポジティブ感情):心の平和、感謝、満足、喜び、創造性、希望、
好奇心、愛情がここに含まれる。
Engagement(エンゲージメント):興味を引きつけられるがあまり、没頭し、
「我を忘れる」ほど打ち込むこと。
Relationships(関係性):他人と有意義かつ前向きな関係を築いている人は、
そうでない人よりも幸せである。
Meaning(人生の意味や仕事の意義、および目的の追求):意味や意義は、私たち
自身よりも大きな大義のために尽くすことから生まれる。信仰であれ、何らかの
かたちで人類の役に立とうという信念であれ、人はみな、人生に意義を
見いださなければならない。
Accomplishment/Achievement(何かを成し遂げること):人生において大きな
満足を得るためには、何らかの方法で自らを高めていく努力をしなければならない。
セリグマン氏は、その著書の中で、24項目のチェックを提示している。

さらには、様々な幸せへのアプローチを続けている研究者がいる。
幸せは抽象的な概念のように思えるが、多種多様な実験が用いられてきた。
カリフォルニア大学バークレー校の心理学教授であるDacher Keltner博士は、
自身のオンライン講座「The Science of Happiness」の中で、「幸せ」の
研究には主に4つのタイプがあると説明している。
観測サンプリングと経験サンプリング:日常生活のある時点をとらえる研究。
「皿洗いをしているとき(または仕事をしているときなど)、どの程度の幸せを
感じますか」といった問いかけが用いられる。
横断的研究/相関研究:ある時点における気持ちについて、問いに対する答え
をもとにした調査研究。
継続研究:人生を長期的に追跡し、幸せの軌跡を探る研究。
実験研究:幸せと外部影響の間にある意外な関係を特定するための実験。
これらで、幸せの度合いは「自己申告」による。
自己申告は、経験サンプリングの際に1度限りのアンケートを行って収集する場合も
あれば(被験者に突然ランダムに電話をかけ、「今何をしていますか」「今この瞬間、
どの程度の幸せを感じていますか」と聞くような感じ)、行動指標を通じて他人が
報告する場合もある。
ダニエル・カーネマン博士が「感情分析の4つのレベル」を考案している。
幸せを4つの概念領域に分類すれば、分析対象がはっきりしてくる。
・満足感:「私の人生は全般的にうまくいっている」
・性格的特徴:「私は熱心で、前向きな人間だ」
・感情:「私は感謝の念を抱いている」
・感動や興奮:「熱いお風呂に入るのは気持ちが良い」
こうした4つの領域は、「幸せ」と同じような意味をもっており、被験者がどんな
種類の幸せを感じているのか(あるいは感じていないのか)をより詳しく特定する
のに役立つ。研究者たちが幸せの研究でもっとも活用しているのは人生に対する
全般的な満足感ですが、人の幸せを正確に把握するには、すべての概念領域を
考慮する必要がある。たとえば、人生に大きな満足感を抱いている人が常に
感謝の念を抱いているとか、熱いお風呂に浸かるのを習慣にしているとかが
わかれば、そこから相関関係を導き出し、ひいては因果関係を見いだすのに役立つ。

イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の心理学教授であるEdward F. Diener博士は、
「主観的幸福感」と呼ばれる指標を考案した。心理学者たちはこの指標のおかげで、
さまざまな種類の自己申告をもとに、人生に対する満足感と、ポジティブ感情および
ネガティブ感情の相対頻度を組み合わせたかたちで、幸せをより正確に定義できる
ようになった。
この指標は2つの項目に分かれている。
人生満足度:これは、5つの質問文に応える自己申告式の尺度で、人生に対する全般的
な満足感を数値化できる。
ポジティブ感情とネガティブ感情(PANAS)の20項目:こちらも自己申告式
アンケートで、回答しているその瞬間に感じている気持ちを評価する。
この2つの結果を組み合わせたものが個人の主観的幸福感であり、ある時点に
おけるあなたの「幸せレベル」は、人生満足度にPANASのスコアを加えたもの
に相当する。

また、研究結果の1つに「幸せではない」要素を提示するがあったという。
バークレー校の科学研究センター「Greater Good Science Center」のサイエンス・
ディレクターであるEmiliana Simon-Thomas博士は、長年の究明で、
「幸せではない」要素は、があるという。
・個人的な欲求がすべて満たされること
・人生に対して常に満足感を抱くこと
・いつも喜びを感じていること
・ネガティブな感情を一切持たないこと
科学研究センターが研究を重ねて発見したのは、真の幸せとは心の平静より大きな
「良いこと」に目を向けることだそうだ。幸せとは、欲求を満たし、いつも
「良い気分」でいたり、人生のあらゆる面に満足したりすることではない。
幸せをめぐる要素でとりわけ重要なのは、今この瞬間にあなたが感じている
かもしれないネガティブな感情という。「ネガティブな感情がなければ幸せ」
というわけではない。
別の研究では、真の幸せとは幸運も不運も受け入れることだという。
幸せならいつも明るく、喜びに満ちて、満足しており、どんな時でも笑顔でいるだろう
と思われがちだが、そうではなく、幸せで豊かな人生は、楽あれば苦ありの日々を
受け入れることであり、悪いことを違った視点から見る方法を学ぶことにある。

最後は、ごく一般的な幸せの定義となったが、最後の「幸せで豊かな人生は、
楽あれば苦ありの日々を受け入れることであり、悪いことを違った視点から見る
方法を学ぶこと」はお互い肝に銘ずるべきことかもしれないようだ。



ーーーーーーーーーーー

研究者がもう少し簡単に幸せを計測できるようにと、イリノイ大学アーバナ・
シャンペーン校の心理学教授であるEdward F. Diener博士は、「主観的幸福感」
と呼ばれる指標を考案しました。心理学者たちはこの指標のおかげで、さまざまな
種類の自己申告をもとに、人生に対する満足感と、ポジティブ感情およびネガティブ
感情の相対頻度を組み合わせたかたちで、幸せをより正確に定義できるように
なりました。この指標は2つの項目に分かれています。
人生満足度:これは、5つの質問文に応える自己申告式の尺度で、人生に対する全般的
な満足感を数値化できます。
ポジティブ感情とネガティブ感情(PANAS)の20項目:こちらも自己申告式アンケート
で、回答しているその瞬間に感じている気持ちを評価します。
この2つの結果を組み合わせたものが、あなたの主観的幸福感になります。ある時点に
おけるあなたの「幸せレベル」は、人生満足度にPANASのスコアを加えたものに相当す
るわけです。もちろん、幸せのレベルは変動しますから、スコアはある時点で感じてい
る幸せの程度をはじき出したものにすぎません。数日もしくは数カ月にわたって何度か
アンケートに答え、平均スコアを出してみても良いでしょう。さて、幸せの科学的な研
究方法がわかったところで、次は、心理科学が幸せをどのように定義しているか
(そして、より幸せになるためにそれをいかに活用していくか)を詳しく見ていきたい
と思います。
ただし、これからお話しする中で念頭に置いてほしいのですが、心理学研究の領域では
近ごろ大きな議論が巻き起こっています。「心理学研究の再現性」として知られる
大規模調査が新たに実施され、その結果の全文が学術誌『Science』に掲載されました
。
それによると、心理学研究の再現を試みたところ、もとの研究と同じ結果が得られた
ケースはごくわずかだったというのです。もちろん、この大規模調査は、学習、記憶、
認知に関する研究を中心にしており、幸せに関する研究やポジティブ心理学などの
他分野を対象としたものではありません。とはいえ、研究結果が何を指し示して
いようとも、それは決して不変ではないことを、常に忘れずにいてください。

研究結果が示す、「幸せではない」要素とは

幸せを科学的に定義づけようと試みるのなら(幸せに限ったことではありませんが)、
消去法がベストかもしれません。「幸せではない」ことが何かわかれば、最低でも幸せ
とは何なのかを絞り込めるでしょうから。カリフォルニア大学バークレー校の科学研究
センター「Greater Good Science Center」のサイエンス・ディレクターであるEmilian
a Simon-Thomas博士は、長年にわたって究明されてきた基本原則がいくつかあると
言います。結論から言えば、「幸せではない」要素は、以下の通りです。

個人的な欲求がすべて満たされること
人生に対して常に満足感を抱くこと
いつも喜びを感じていること
ネガティブな感情を一切持たないこと

驚きましたか? もしもそうなら、あなたの持つ幸せの定義は、ほんのちょっとずれて
いたのかもしれません。同大学の科学研究センターが研究を重ねて発見したのは、真の
幸せとは心の平静より大きな「良いこと」に目を向けることだそうです。幸せとは、欲
求を満たし、いつも「良い気分」でいたり、人生のあらゆる面に満足したりすること
ではありません。
快楽主義や、喜びや自由の追求は、一時的に幸せをもたらすこと
がわかっていますが、カーネマン博士の研究によると、全般的な幸福感を長く維持
する上では効果がないようです。

幸せをめぐる要素でとりわけ重要なのは、今この瞬間にあなたが感じている
かもしれないネガティブな感情です。ネガティブな感情など存在しないほうが
良いような気がするかもしれませんが、「ネガティブな感情がなければ幸せ」という
わけではありません。
社会心理学の博士研究員であるVanessa Buote氏は『ハーバード・ビジネス・レビュー
』の記事の中で、真の幸せとは幸運も不運も受け入れることだと述べています。

幸せならいつも明るく、喜びに満ちて、満足しており、どんな時でも笑顔でいるだろう
と思われがちですが、それは誤解です。そうではありません。幸せで豊かな人生は、楽
あれば苦ありの日々を受け入れることであり、悪いことを違った視点から見る方法を学
ぶことなのです。
ネガティブな感情にさいなまれながらも、人生に幸せを感じることはできます。
むしろ、そうする方法を身につけるのが、幸せな人間になるために欠かせないのです。

幸せの追求には限界がある
これで、科学が幸せをどう定義しているのかがわかりました。しかし、それでは幸せに
ついて半分しかわかったことになりません。それよりも大事なのは、「自分は幸せにな
れるのか」ということ。簡単に言ってしまえば、答えは「イエス」なのですが、脳内に
ある化学物質のアンバランスを調整するための処方薬をのぞけば、幸せになれる「魔法
の薬」など存在しません。幸せになるには意識的な努力が必要であり、それには制約も
ついてきます。

まず、あなたの幸せの範囲は、おそらく、遺伝的に決められています。カリフォルニア
大学リバーサイド校のSonja Lyubomirsky博士によると、これはつまり、受け継いだ遺
伝子により、現在の、あるいは「慢性的な」幸せレベルが維持されている可能性がある
という意味です。ふさぎ込むことの多い家系に生まれたのであれば、あなたもまたそう
いうタイプかもしれません。さらに、どこまで幸せになれるのかという最大限度も、遺
伝子が決めている可能性があります。基本的に、幸せはあなたの人となりの一部、
あなた自身の一部なのです。
Lyubomirsky博士によると、人間の幸福感は生涯にわたってきわめて一定していること
が継続研究からわかっているそうです。というわけで、みじめな人間を一夜にして
世界で1番ハッピーな人間に変身させる術はありません。
次に、幸せになろうと努力するあまり、自分に対していたずらに制限を設けてしまう
可能性があります。カリフォルニア大学サンフランシスコ校のLahnna I. Catalino博士
は、必要以上に幸せを追求するとかえって裏目に出るかもしれないとして、極端な方法
で幸せを得ようとするのはやめるべきだと警鐘を鳴らしています。
自分に非現実的な目標を課したり、絶えず前向きな気持ちを維持しようとがんばったり
してはいけません。
失敗するのは目に見えていますし、皮肉にも、そのせいで不幸せになってしまう
でしょう。
精神科医であり、『F*ck Feelings: One Shrink's Practical Advice for Managing 
All Life's Impossible Problems』の共著者でもあるMichael Bennett氏は、幸せを
追求するなら、地に足をつけた姿勢が重要だと指摘しています。
大事なのは、どんなセラピーに従うかではなく、常識的で落ち着いた状態を保つこと
です。どんなセラピーをどれだけ試そうが「このセラピーで自分は到達できるところ
まで行けたのだろうか」と繰り返し自分自身に問いかけることが大切です。
そうすれば、「もっとうまくやれれば」とか「もっと長く続ければ」「もっと良い
セラピストが見つかれば」という思考を堂々巡りせずに済みます。それよりも、
「自分が到達できるところまで行けたのなら、次はどうしたらいいのだろうか」
と考えるべきです。

忘れてならないのは、自分の手には負えない限界があることです。それについて自分を
責めてはいけません。あなたはあなたらしくいるだけなのですから。Catalino博士は、
無理に幸せになろうとするよりも、一瞬一瞬に目を向け、自分に喜びをもたらす活動と
じっくり向き合うようすすめています。幸せになろうとがんばるのはもうおしまい
にしましょう。

幸せいっぱいの人が持つ共通点とは何か

本当のことを言えば、真の幸せと満足感は、1つしかないわけではありません。
幸せとは遺伝的特徴と、気持ちと、性格と、感情と、人生におけるさまざまな
事情や状況が合わさって最高の時を迎えた状態なのです。大きな声では言えませんが、
幸せに関しては研究者たちもいまだ論争の最中であり、それが何なのかはよく
わかっていません。とはいえ、少なくとも幸せが「どんなふうに見えるのか」
は研究からかなり明らかになっています。人によって限界がまちまちとはいえ、
個人的な幸せの限度を最大限に広げるためにできることがあるのです。
具体的には、たっぷり運動をして(内心で目標を定めておくと効果がアップします)、
十分な睡眠をとり、心の知能指数(EQ)を育み、モノではなく経験にお金を費やすこと
から始めてみると良いでしょう。何を目標にすれば良いのかわからないなら、
「PERMA」を覚えておいてください。PERMAは、心理学者でポジティブ心理学の提唱者
であるマーティン・セリグマン氏が編み出し、著者『ポジティブ心理学の挑戦
 "幸福"から"持続的幸福"へ』の中でも紹介されているもので、健康で満足した状態を
示す、5つの主要要素の頭文字を取っています。
Positive Emotion(ポジティブ感情):心の平和、感謝、満足、喜び、創造性、希望、
好奇心、愛情がここに含まれる。
Engagement(エンゲージメント):興味を引きつけられるがあまり、没頭し、「我を忘
れる」ほど打ち込むこと。
Relationships(関係性):他人と有意義かつ前向きな関係を築いている人は、
そうでない人よりも幸せである。
Meaning(人生の意味や仕事の意義、および目的の追求):意味や意義は、私たち
自身よりも大きな大義のために尽くすことから生まれる。信仰であれ、何らかの
かたちで人類の役に立とうという信念であれ、人はみな、人生に意義を
見いださなければならない。
Accomplishment/Achievement(何かを成し遂げること):人生において大きな
満足を得るためには、何らかの方法で自らを高めていく努力をしなければならない。

幸せの科学的な解明は、まだまだ続きます。けれども、これまでの研究から、幸せがた
だ幸運を意味するものではないことが明らかになっています。実際に、手の内のカード
が他人より恵まれない場合もあるでしょう。でも、それでどうプレイするかはあなた次
第です。それどころか、幸せとは、いかにプレイするかということでさえありません。
多くの研究者たちはこう言うのではないでしょうか。どのようなカードであっても、
そのゲームを楽しむ道を見つけることが大事なのだと。


ネガティブな感情をポジティブに変化させるコツは、ネガティブな感情を正しく認識で
きるようにし、どんな行動の変化がその感情を軽減できるか突き止めることだ ILLUSTR
ATION: CHRISTOPHER KAESER/THE WALL STREET JOURNAL
By ELIZABETH BERNSTEIN
2016 年 8 月 23 日 13:48 JST

 朗報がある。「落ち込む」という感情には利点があるのだ。

 一部の専門家の間で「ポジティブ心理学の第2波」と呼ばれる潮流がある。自分に不
快感や不満をもたらすネガティブな感情には良いこともあると、多くの心理学者が認識
し始めているのだ。ネガティブな感情を注視すれば、自分の生活で何か悪いのかを特定
し、変化を求める一助になり得る。研究によれば、ポジティブ思考だけでなくネガティ
ブ思考も抱く人のほうが健康的であることさえ分かってきた。

 これは、1990年代末以降に人気を博している心理学的アプローチに対抗するものだ。
当時台頭した「ポジティブ心理学」という分野では、人は単に苦悩から自由になるだけ
でなく成功すべきとの考え方に基づき、陽気な感情と気質が強調された。ポジティブな
感情の力をどう使えばより幸福になるかについて、何千にも上る研究論文や書籍や雑誌
の記事が出版された。

 これに対し米ノックス大学(イリノイ州)のフランク・マカンドリュー教授(心理学
)は、ネガティブな感情を「赤ん坊の泣き声のように」考えたらいいと説く。「それは
不快で嫌悪感を引き起こすが、何か良いことをしようという気にもさせる」

 すべてのネガティブな感情に良い面があるというわけではない。希望のなさ、無価値
と感じる感情、あるいは絶望といった感情(心理学者はこれらを「空虚な感情」と呼ぶ
)は通常、うつの兆候であって、利点に変えるのは不可能に近い。こうした感情が2週
間以上続いた場合、プロの助言を求めるべきだと専門家たちは言う。

 有益になり得るネガティブな感情、つまり通常ポジティブな変化に利用できる感情に
は、罪の意識、怒り、悲しみ、不安、ねたみ、孤独などがある。空虚な感情とは違って
、これらの感情は現実に基づいていることが多い。何かが実際に起きて人をそのように
感じさせているわけだ。そして、悪い行動(自身の行動であれ他人の行動であれ)から
自らを守る必要があるとの警告を発している。

 ネガティブな感情をポジティブに変化させるコツは、ネガティブな感情を正しく認識
できるようにし、どんな行動の変化がその感情を軽減できるか突き止めることだ。目標
はその感情を追い出すことではなく、ポジティブな変化のためにそれを利用することで
ある。

 コツをいくつか紹介しよう。

・感情を言葉で表現する

 感情を一言で表現しよう。「私は怒っている」「私は悲しい」などと自分に言ってみ
ることだ。

 何を感じているか正確に認識することが難しければ、自分の体に聞いてみるといい。
サンディアゴ在住の臨床ソーシャルワーカー、マリエル・ディアズ氏によれば、深呼吸
を5~10回してみる。心臓が速くなっている場合は、不安を抱いている公算が大きい。
胸に重い感情がある場合は、恐らく悲しい。あごに緊張感がある場合は、怒っているし
るしだ。

・良い面と悪い面のリストを作成する

 ネガティブな感情は、何かを変える必要があるというシグナルだ。しかし、それを変
えたら気分が良くなるということを知るにはどうしたらいいのか。それには長短両面を
比較する必要がある。

 あなたが抱くネガティブな感情の原因になった行動を考えてみる。そしてその行動に
よって気分が良くなった側面をすべてリストアップしよう。反対側のページには、その
行動があなたの気分を悪くした側面をすべてリストアップする。

 例えば、あなたが何かの行為に罪の意識を感じたとしよう。昨晩、仲間と外出して、
あなたがそこにいない友人のうわさ話をしたようなケースだ。良い面を列挙した欄には
、仲間たちが注目してうわさ話に聞き入り、うわさ話をしている時に自分が人気者にな
ったという感情が記載されるかもしれない。悪い面を列挙した欄には、その後、よく眠
れなかったことが記載されるかもしれない。あなたが罪の意識を感じ、午前中ずっとい
らいらし、うわさ話の対象にした友人にばれるかもしれないと心配しているからだ。そ
の上で自問してみよう。良い面の感情は悪い面の感情を抱かせてもいいほどの価値があ
ったのか、と。

 アトランタ在住の精神科医のダイオン・メツガー氏は「嫌な感情は防御機能を持つこ
とがある。人生で回避する必要のあるものを教えてくれるからだ」と述べる。同氏は自
分の患者にこの手法を利用するよう指示することが多いという。

・「すべき」との内なる声に耳を傾ける

 われわれには誰でも「内なる批判者」がいて、何を「すべきか」を教えてくれる。そ
の声に耳を傾けることが大切だ。

 あなたがカクテルパーティーに出席していて、別の招待客の女性が職場での自らの昇
進について話しているとしよう。彼女は自分の新しい責任に興奮している。海外出張も
あるだろうし、大幅な昇給も得たという。それを聞いていたあなたは煩わしくなり、彼
女のことが好きになれなくなった。あなたは「ねたんでいる」のだ。

 あなたの「内なる批判者」は何と言うだろうか。もっと一生懸命働いて、上司の印象
をよくすべきだと言うのか。あるいは人脈を頼って新しい職場を探すべきだと言うのか
。「『内なる批判者』は、どんな行動をとるべきかをあなたに教えてくれる」と、前出
のディアズ氏は言う。

2016年7月23日土曜日

ポジティブサイコセラピー

ポジティブサイコセラピー
ポジティブサイコセラピー治療マニュアルが詳細にある。

自身を高めるということでは、禅をはじめとして、様々な手法が多くの先達たちに
よって考案されてきた。個人的には坐禅の4回ほどの体験やNLPなどのいくつかの
心理学の体験や知識の習得、をしてきたつもりではあるが、振り返れば、その痕跡
さえ怪しい。しかし、7,8年前に知ったポジティブ心理学は、自分の特性にも
あっているのか、専門の方の指導はまだ受けていないものの、以下にある
サイコセラピーのいくつかを実践することにより、自身の変化を感じている。
ここで、ポジティブサイコセラピーの概説を述べることにより、少し理解をしてもらえ
れば、
と思っている。もっとも、本格的な実践はいまだできず、少々頼りない話でもあるが。
なお、ポジティブサイコセラピー治療マニュアルが出ているとのことだが、邦訳は
ないとのこと。できれば、その詳細に触れてみたいとの思いもあるが。

その概説
1)ポジティブなリソースの確認
日本語で800文字程度の「ポジティブな自己紹介」を描く。そのなかで、自分が最高
だった
時の物語を具体的に語り、自分の最高の強みをどのように活用したかを説明する。

2)ポジティブな自己紹介によって自分の徳性の強みを特定し、以前にどのような
状況でそれらの強みが自分の役に立ったかを話し合う。
VIAテストにより自分の徳性の強みを特定すること。

3)徳性の強みによって快、エンゲージメント、意味意義が促進される可能性のある
具体的な状況に集中的に取り組み。
「良いこと日記」を描き始める。その日記に、毎晩、その日に起きた3つの良いこと
を書くこと。

4)抑うつが持続する場合の良い記憶と悪い記憶の役割について話し合う。
怒りや恨みの感情を書き出すこと。それがどのように抑うつの原因になっているかを
書き出す。

5)怒りや恨みの感情をニュートラルな感情に変える、あるいは一部のひとにとっては
ポジティブ感情にも変えることのできる強力な手段として「ゆるし」の実践を
導入する。
「許しの手紙」を書いて、相手の罪やそれに関連した感情を説明し、相手を許す
と誓うこと。ただし、この手紙は相手に送らない。

6)感謝について限りないありがたい気持ちとして話し合う。
今まできちんと感謝の気持ちを示したことのない人に感謝の手紙を書き、その手紙を
相手に直接届けること。

7)「良いこと日記」や強みの活用を通して、ポジティブ感情を高めることの重要性を
再確認すること。

8)最低限の条件で満足するの方(満足者)が極限まで追求しないと満足しない追及者
よりもウェルビーイング状態にあるということを話し合う。
自分の満足度を向上させる方法を再確認して、自分のための「満足計画」をつくる。

9)「説明スタイル」を用いて、楽観性や希望の実践について話し合う。
自分の前で閉まった「3つのドア(逃がしたチャンス)」について考える。
その後、どんな新しい可能性が開かれたかを考える。

10)自分の大切な人の強みを認識するように手引きされる。
ほかの人から報告されたポジティブな出来事に対して、積極的かつ建設的な反応を示す
クライアントをコーチする。さらに自分の強みと、自分の大切な人の強みをたたえる
時間を持つこと。

11)家族1人1人の持つ強みをどのように発見すればよいか、またクライアント
自身の強みがどこに由来しているのかを話し合う。
家族にVIAテストを受けてもらい、家族全員の強みを含む家系図を描く。

12)ポジティブ感情の強度と持続時間を増やすテクニックとして「深く
味わってみる」エクササイズを導入する。
何か新しい活動を計画してそれを計画通りに実行する。

13)あらゆるものの中で最高の贈り物の1つである「時間の贈り物」を
することが出来る。
自分の強みが求められることを実行して「時間の贈り物」をする。

14)快、エンゲージメント、意味意義を統合する十全な人生について話し合う。


独自の強みを活かして、積極的ー建設的な反応し続けるかを考えるというエクササイズ
もある。
反応の4つのパターン
1)積極的ー建設的  誠意と熱意をもってサポートする。
私の家内が最高の職を見つけたといってきた。に対して、
「それはよかった。新しい仕事ってどんなの?奥さんはいつから働き始めるの?
どうやってその職を得たの?

2)受動的ー建設的  控えめのサポートをする
「へえ、そうなの」

3)受動的ー破壊的  出来事をサポートする
息子から変なメールが届いたんだけど、ちょっと見てよ」

4)積極的ー破壊的  出来事のネガティブな側面を指摘する。
「そうすると誰が息子の面倒を見るの?ベビーシッターは信用できないよ。
虐待するとかの話も多いしね」。 

その対応には、
好奇心の強みを使っていろいろと質問する。
「熱意」の強みを活かして積極的に反応する。
「知恵」の強みを用いて学ぶべき価値ある教訓を指摘する。
など
受動的なスタイルでは、「どうせあなたは私の話を聞いてくれないでしょう」
というメッセージが発信される。

双方が理解しあえる会話となるには、以下の5つの段階を考えていく。
1)状況を特定し、状況を理解する
2)客観的かつ正確に状況を説明する。
3)気になることを言ってみる。
4)ほかの人の考え方に耳を傾け、好ましい変化に向けて努力する。
5)変化が起きた時に伴う利点を書き上げてみる。
詳細はマーティン・セリグマン著「ポジティブ心理学の挑戦」にある。


さらに「幸せではない」要素の研究も進んできている。
それには、
・個人的な欲求がすべて満たされること
・人生に対して常に満足感を抱くこと
・いつも喜びを感じていること
・ネガティブな感情を一切持たないこと

以上のように、我々の持つ幸せの定義は、ほんのちょっとずれていたのかもしれない。
同大学の科学研究センターが研究を重ねて発見したのは、真の幸せとは心の平静より
大きな「良いこと」に目を向けること。幸せとは、欲求を満たし、いつも「良い気分」
でいたり、人生のあらゆる面に満足したりすることではない。

マーティン・セリグマン著「ポジティブ心理学の挑戦」では、さらにポジティブヘルス
についても調査している。
この本では、多くの実践的な試みとその手法の開発により、健康面での大きな
成果が示されている。
その定義とは、
①主観的資産
楽観性、希望、健康の感覚、熱意、活力、人生の満足度
②生物学的資産
心拍変動の上限、ホルモン、低濃度のインターロイキン、テロメアなど
③機能的資産
すばらしい結婚生活、歳以上の体力、豊かな人間関係、充実したライフワークなど

その成果より
・心血管の健康資産
この疾患(例えば、心臓発作)に対する抵抗力を平均以上に高める主観的、
生物学的、機能的な資産は存在するのか?
→結論的には、楽観性が心血管疾患から保護する事に強く関係している。

・風邪等の感染症対応
ポジティブ感情の高い人は、平均的なポジティブ感情を持つ人よりも風邪に
罹りにくい。重要なのはネガティブ感情の大きさよりもポジティブ感情の
強さにより抵抗力は大きくなる。

以上などからここでは、ウェルビーイングの因果関係と身体への影響について
以下のように考えている。
①楽観性は心血管の健康に、悲観性は心血管の危険性に強く関係している。
②ポジティブな気分は、風邪やインフルエンザの予防に、またネガティブな
気分は風邪やインフルエンザに対するより大きな危険性に関係している。
③非常に楽観的な人はがんになる危険性が低い可能性がある。
④健康な人で、良好な心理的ウェルビーイングにある人は、全死因死亡に
対する危険性が少ない。

その要因は、
①楽観主義者は行動的であり、健康的なライフスタイルを実践している。
すなわち、食事に気をつけ、喫煙せず、定期的に運動する傾向がある。
②社会的な支援が多い。
人生で友人と愛情に多く恵まれている人は病気になりにくい。
③生物学的メカニズムが高い。
脅威に対する免疫力が高い。また、度重なるストレスにより上手く対処できるが、
悲観主義者はそのストレスに一層苦しむ様になる。

また、国レベルでの調査では、
・人生の満足度は国民一人あたりのGDPが高い国ほど高くなっている。
P399の表がそれを明瞭に示している。
しかし、金をたくさん儲けることにより直ぐに人生の満足度において
収穫逓減の点に達する。これを対数表で見ると終点のない上向きの直線
となり、国が公共政策として幸福の増大を目的とすると更なる富を生み
出さないと幸福は得られない事にもなる。

この調査で重要なのは、「あなたはどれくらい幸せですか?」ではなく、
「あなたは自分の人生にどれくらい満足しているか?」である。
この点でみると、最も裕福なアメリカ人の幸福度は平均的な原住民の
幸福度と大きな差異はない。


正法眼蔵とはかなり似た考えがあると個人的には思っている。
日常での行いに修行があり、覚りがある、「行、住、座、臥」という普段の
人間の行動すべてが修行である、という基本となる考えは、ポジティブ心理学と変わら
ない。
だが、正法眼蔵の弁道話にある、
「仏法を正しく伝える宗門では、仏法が各々の資質のままに実現する誤りのない
座禅修行こそ、最上の中の最上であるとして、修行者が初めて師に参じたとき
から、焼香、礼拝、念仏、修懺、看経を用いず、ただひたすら打坐して心身
脱落することを得よと教えるのである」が、この「只管打坐」の4文字を
具体的な形にしていくには、中々に難しいと思う。先ほどの14の行動のような
具体的な処方があると、素人にも対応ができるのだが、単に「只管打坐」を
しなさいと言われても、多くの衆生は悩むだけではないのだろうか。

ウェルビーイング

セリグマンの「ポジティブ心理学の挑戦」より」、
彼は従来の幸せの定義からさらに進め、ウェルビーイングを獲得することが
重要と述べている。

1.ウェルビーイング
主観的ウェルビーイングの構成とは、幸福感(気分)と人生の満足度(評価)
からなっている。人生の満足度の多くは、収入に伴って上がるが、気分の
大部分は国内の寛容度の増大によって上がる。それ故、ウェルビーイングが
収入に伴って上がる事は一概に考えにくい。それは、収入が上がるのに伴い
生活環境に対する判断も上がっていくが、気分はそうではない。
収入が増える事で、生活環境に対する評価におけるポジティブ度は上がるが、
一時的な気分には影響を与えない。気分と判断は剥離している。

ウェルビーイングの5つの要素(PERMAと言われている)
①Positive Emotion(ポジティブ感情):心の平和、感謝、満足、喜び、創造性、
希望、好奇心、愛情がここに含まれる。
自分は、どれくらい幸せと思っているのか。
主観的な要素であるが、幸福感や人生の満足度よりも上位に来る。
②Engagement(エンゲージメント):興味を引きつけられるがあまり、没頭し、
「我を忘れる」ほど打ち込むこと。興味関心が高いか。
③Relationships(関係性):他人と有意義かつ前向きな関係を築いている人は、
そうでない人よりも幸せである。ポジティブな状況の場合、多くは他人、他者の
存在がある。自分を気にしてくれる人がいるか。
④Meaning(人生の意味や仕事の意義、および目的の追求):意味や意義は、私たち
自身よりも大きな大義のために尽くすことから生まれる。信仰であれ、何らかの
かたちで人類の役に立とうという信念であれ、人はみな、人生に意義を
見いださなければならない。
⑤Accomplishment/Achievement(何かを成し遂げること):人生において大きな
満足を得るためには、何らかの方法で自らを高めていく努力をしなければならない。
他の要素が得られなくとも、これのために追及する。

さらに、従来から言われている「24の強み」がこれらの要素を
支え、さらに進化させる。
自身の最高の強みを活用することで、ポジティブ感情、エンゲージメント、
意味、達成、などをより多く得られる。

ウェルビーイングの向上について
①感謝の気持を表現する。
感謝の手紙を書く。
②上手く行ったことについて考える。
毎晩、今日上手く行った事を三つ書き出し、それらがどうして上手く
行ったかを考える。
更に、上手く行った事の中に自分の強みを考え合わせる事。

この実践は、自分の強みを自分の物にするように働きかける。
このため、VIA強みテストを受ける必要がある。上位5つが自身の強みとなる。
自身のウェルビーイングを更に高めるには以下の14のセッションを実行する。
①ポジティブな自己紹介を800文字程度に書く。
自分が最高だった時の事を具体的に、その中で自分の強みをどのように活用したのか
説明する。
②VIAテストで自分の徳性の強みを特定する。
③「よいこと日記」を書き始める。毎晩、その日に起きた三つの良い事
を書く。
④怒りや恨みの感情を書き出す。それが今の自分への悪影響となっているかを
考える。
⑤「許しの手紙」を書いて相手の罪や関連した感情を説明して、相手を許す。
⑥いままでキチンと感謝の気持を伝えた事のない人に感謝の手紙を書く。
手紙を相手に直接届ける。
⑦上記の行動でポジティブ感情を高める事の重要性を再認識する。
⑧追及者になるのではなく、満足者になることで、自分の満足度を向上
させる事を確認し、自分のための自己満足計画を立てる。
⑨自分の目の前で逃がしたチャンスを考え、それを糧にどのような可能性
が拓かれたか、考える。
⑩自分の強みと自分の大切な人の強みをたたえる時間を持つこと。
⑪自分の自身の強みがどこから来ているのか、考える。
家族の強みを含む家系図を書く。
⑫何か新しい活動を計画し、それを実行する。
⑬かなりの時間がかかることで、自分の強みが求められる事を実行し、
時間の重要性を知る。
⑭「快、エンゲージメント、意義を統合する人生について話し合う。

2.自分の強みを認識する。
世界的に美徳とされているものに以下の6つがあるとされる。これは様々な文化、
宗教、風土に関わらず人類に共通したものといわれる。それには、「知恵と知識」
「勇気」「愛情と人間性」「正義」「節度」「精神性と超越性」がある。
そして、この美徳を構成しているものが以下の24項目となり、個人の性格
の強みとなる。
セリグマンの「世界で1つだけの幸せ」から自分の強みを見つけて欲しい。
1)知恵と知識
①好奇心と関心
・常に世界に対する好奇心を持っている。
・直ぐに退屈してしまう。
②学習意欲
・何か新しい事を学ぶとわくわくする。
・わざわざ博物館や教育関連の施設などに出かけたりはしない。
③判断力、批判的思考、偏見のなさ
・話題に対してきわめて理性的な考え方が出来る。
・即断する傾向にある。
④独創性、創意工夫
・新しいやり方を考えるのが好きだ。
・友人のほとんどは自分より想像力に富んでいる。
⑤社会的な知性、個人的知性
・どんな社会的状況でも適応する事が出来る。
・他の人が何を感じているかをさっちするのは余り得意ではない。
⑥将来の見通し
・常に物事を見て全体を理解する事が出来る。
・他人が自分にアドバイスを求める事はめったにない。
2)勇気
⑦武勇と勇敢さ
・強い反対意見にも立ち向かう事がよくある。
・苦痛や失望にくじけてしまうことがよくある。
⑧勤勉、粘り強さ、継続的努力
・やりはじめたことは必ずやり終える。
・仕事中に横道にそれる。
⑨誠実、純粋、正直
・約束は必ず守る。
・友達から「地に足がついている」といわれた事がない。
3)人間性と愛情
⑩思いやりと寛大さ
・この1ヶ月間に自発的に身近な人の手助けをした。
・他人の幸せに自分の幸せと同じくらい興奮する事はめったにない。
⑪愛する事と愛される事
・私には、自分のこと以上に、私の感情や健康を気遣ってくれる人がいる。
・他の人からの愛情をうまく受け入れられない。
⑫協調性、義務感、チームワーク、忠誠心
・グループの中にいるときが一番良い仕事ができる。
・所属するグループの利益のために自己の利益を犠牲にすることには抵抗がある。
4)正義
⑬公平さと公正さ
・その人がどんな人であろうと全ての人を公平に扱う。
・好ましく思わない人の場合、その人を公平にあつかうことは難しい。
⑭リーダーシップ
・口うるさくすることなく、いつでも人々に共同で何かをさせることが出来る。
・グループ活動を企画するのは余り得意ではない。
5)節度
⑮自制心
・自分の感情をコントロールできる。
・ダイエットは続いたことがない。
⑯慎重さ、思慮深さ、注意深さ
・肉体的な危険をともなう活動は避ける。
・友人関係や人間関係で、ときどき不適切な選択をしてしまう。
⑰謙虚さと慎み深さ
・人が自分の事をほめると話題を変える。
・自分の業績についてよく人に語る。
6)精神性と超越性
⑱審美眼
・ここ1ヶ月間に音楽、美術、演劇、映画、スポーツ、科学、数学など
の素晴らしさに打たれたことがある。
・この1年間美しいものを創り出していない。
⑲感謝の念
・どんなささいなことであっても、必ず「ありがとう」と言う。
・自分が人より幸福であると思うことがめったにない。
⑳希望、楽観主義、未来に対する前向きな姿勢
・物事をいつも良いほうに考える。
・やりたいことのために、ジックリ計画を立てることなどめったにない。
21)精神性、目的意識、信念、信仰
・私の人生には強い目的がある。
・人生における使命はない。
22)寛容さと慈悲深さ
・いつも過ぎたことは水に流す。
・いつも相手と五分になろうとする。
23)ユーモアと陽気さ
・いつも可能なかぎり仕事と遊びを織り交ぜている。
・面白い事はめったに言わない。
24)熱意、情熱、意気込み
・やることは全てにのめりこむ。
・塞ぎこむ事が多い。

以上の24個の質問に対して、
とても当てはまる(5点)あてはまる(4点)どちらとも言えない(3点)
当てはまらない(2点)まったくあてはまらない(1点)として採点してみる。
得点が9点か10点になる項目がその人の強気である。また、得点が6点以下の項目が
弱点となる。
これでの私の強みは、
・将来の見通し
・希望、楽観主義、未来に対する前向きな姿勢
・精神性、目的意識、信念
の3つであった。

いずれにしろ、この強み発見は是非試してもらいたいものである。

3.ポジティブヘルス
この本では、多くの実践的な試みとその手法の開発により、健康面での大きな
成果が示されている。
その定義とは、
①主観的資産
楽観性、希望、健康の感覚、熱意、活力、人生の満足度
②生物学的資産
心拍変動の上限、ホルモン、低濃度のインターロイキン、テロメアなど
③機能的資産
すばらしい結婚生活、歳以上の体力、豊かな人間関係、充実したライフワークなど

その成果より
・心血管の健康資産
この疾患(例えば、心臓発作)に対する抵抗力を平均以上に高める主観的、
生物学的、機能的な資産は存在するのか?
→結論的には、楽観性が心血管疾患から保護する事に強く関係している。

・風邪等の感染症対応
ポジティブ感情の高い人は、平均的なポジティブ感情を持つ人よりも風邪に
罹りにくい。重要なのはネガティブ感情の大きさよりもポジティブ感情の
強さにより抵抗力は大きくなる。

以上などからここでは、ウェルビーイングの因果関係と身体への影響について
以下のように考えている。
①楽観性は心血管の健康に、悲観性は心血管の危険性に強く関係している。
②ポジティブな気分は、風邪やインフルエンザの予防に、またネガティブな
気分は風邪やインフルエンザに対するより大きな危険性に関係している。
③非常に楽観的な人はがんになる危険性が低い可能性がある。
④健康な人で、良好な心理的ウェルビーイングにある人は、全死因死亡に
対する危険性が少ない。
その要因は、
①楽観主義者は行動的であり、健康的なライフスタイルを実践している。
すなわち、食事に気をつけ、喫煙せず、定期的に運動する傾向がある。
②社会的な支援が多い。
人生で友人と愛情に多く恵まれている人は病気になりにくい。
③生物学的メカニズムが高い。
脅威に対する免疫力が高い。また、度重なるストレスにより上手く対処できるが、
悲観主義者はそのストレスに一層苦しむ様になる。

また、国レベルでの調査では、
・人生の満足度は国民一人あたりのGDPが高い国ほど高くなっている。
P399の表がそれを明瞭に示している。
しかし、金をたくさん儲けることにより直ぐに人生の満足度において
収穫逓減の点に達する。これを対数表で見ると終点のない上向きの直線
となり、国が公共政策として幸福の増大を目的とすると更なる富を生み
出さないと幸福は得られない事にもなる。
この調査で重要なのは、「あなたはどれくらい幸せですか?」ではなく、
「あなたは自分の人生にどれくらい満足しているか?」である。
この点でみると、最も裕福なアメリカ人の幸福度は平均的な原住民の
幸福度と大きな差異はない。


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フロリダ州立大学の歴史学教授であるDarrin M. McMahon博士によると、古代の人々は
、幸せを「幸運の証し」であると考えていたようです。
特筆すべきは、インド・ヨーロッパ語族に属する言語では、古代ギリシャ語にいたるま
で例外なく、「幸せ」を意味する言葉が「幸運」を意味する言葉と語源を同じくしてい
る点です。この言語学上のパターンはいったい何を示唆しているのでしょうか。多くの
古代人にとって、そしてその後に続く多数の人間にとって、幸せは自らの手でコントロ
ールできる類のものではありませんでした。
こういった考え方は実際、現代でもかなり一般的です。多くの人が、幸せとは幸運であ
ること、恵まれた人生であること、または単に運の良い人間であることだと思っていま
す。しかし、ご存じのように、幸運を呼び込むのは不可能ではありません。一方で、ポ
ジティブ心理学と、神経学などの科学分野が手を組んで、何が幸せを呼び起こしている
のかを突き止めるべく、大きく前進を遂げてきました。その結果、ある程度であれば幸
せはコントロール可能であることがわかっています。
幸せはどう測り、どう研究するのか

幸せは抽象的な概念のように思えますが、その研究方法は、それ以外の概念を研究する
場合と同じで、多種多様な実験が用いられました。カリフォルニア大学バークレー校の
心理学教授であるDacher Keltner博士は、自身のオンライン講座「The Science of 
Happiness」の中で、「幸せ」の研究には主に4つのタイプがあると説明しています。
観測サンプリングと経験サンプリング:日常生活のある時点をとらえる研究。「皿洗い
をしているとき(または仕事をしているときなど)、どの程度の幸せを感じますか」と
いった問いかけが用いられる。
横断的研究/相関研究:ある時点における気持ちについて、問いに対する答えをもとに
した調査研究。
継続研究:人生を長期的に追跡し、幸せの軌跡を探る研究。
実験研究:幸せと外部影響の間にある意外な関係を特定するための実験。
では、幸せの度合いはどうやって測るのでしょうか。答えは「自己申告」です。
驚くくらい単純な方法です(おまけに難点もあります)。上記に挙げたような研究では
たいてい、「人生にどの程度満足していますか」とか「日常的に、どんな種類の
ポジティブ感情とネガティブ感情を抱いていますか」といった質問が使われますが、
ここには、幸せを計測しようという努力が見られません。ジェダイの戦士が
フォースを一切使っていない状態と同じです。被験者にただアンケートを行って、
特定の状況下で幸せを感じているかどうかを聞いているにすぎないのですから。
しかし、心もとないやりかただと思うかもしれませんが、それしかやりようがない
のです。あなたが幸せかどうかを判断できるのは「あなた」だけ。
あなたの幸せレベルを測る上でもっとも信頼の置けるツールは、(現時点では)
あなた自身しかいません。こういった自己申告は、経験サンプリングの際に1度限り
のアンケートを行って収集する場合もあれば(被験者に突然ランダムに電話をかけ、
「今何をしていますか」「今この瞬間、どの程度の幸せを感じていますか」
と聞くような感じです)、行動指標を通じて他人が報告する場合もあります
(乳幼児の研究ではこの方法が特に有益です)。
自己申告は決して完璧ではありません。どのみち、「幸せ」という感情はいくつかの
異なる意味を持っているのですから。ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマ
ン
博士が「感情分析の4つのレベル」を考案したのにはそういった理由がありました。幸
せを4つの概念領域に分類すれば、分析対象がはっきりしてきます。
満足感:「私の人生は全般的にうまくいっている」
性格的特徴:「私は熱心で、前向きな人間だ」
感情:「私は感謝の念を抱いている」
感動や興奮:「熱いお風呂に入るのは気持ちが良い」
こうした4つの領域は、「幸せ」と同じような意味をもっており、被験者がどんな種類
の幸せを感じているのか(あるいは感じていないのか)をより詳しく特定するのに役立
ちます。研究者たちが幸せの研究でもっとも活用しているのは人生に対する全般的な
満足感ですが、人の幸せを正確に把握するには、すべての概念領域を考慮する必要
があります。たとえば、人生に大きな満足感を抱いている人が常に感謝の念を
抱いているとか、熱いお風呂に浸かるのを習慣にしているとかがわかれば、そこから
相関関係を導き出し、ひいては因果関係を見いだすのに役立つかもしれません。
研究者がもう少し簡単に幸せを計測できるようにと、イリノイ大学アーバナ・
シャンペーン校の心理学教授であるEdward F. Diener博士は、「主観的幸福感」
と呼ばれる指標を考案しました。心理学者たちはこの指標のおかげで、さまざまな
種類の自己申告をもとに、人生に対する満足感と、ポジティブ感情およびネガティブ
感情の相対頻度を組み合わせたかたちで、幸せをより正確に定義できるように
なりました。この指標は2つの項目に分かれています。
人生満足度:これは、5つの質問文に応える自己申告式の尺度で、人生に対する全般的
な満足感を数値化できます。
ポジティブ感情とネガティブ感情(PANAS)の20項目:こちらも自己申告式アンケート
で、回答しているその瞬間に感じている気持ちを評価します。
この2つの結果を組み合わせたものが、あなたの主観的幸福感になります。ある時点に
おけるあなたの「幸せレベル」は、人生満足度にPANASのスコアを加えたものに相当す
るわけです。もちろん、幸せのレベルは変動しますから、スコアはある時点で感じてい
る幸せの程度をはじき出したものにすぎません。数日もしくは数カ月にわたって何度か
アンケートに答え、平均スコアを出してみても良いでしょう。さて、幸せの科学的な研
究方法がわかったところで、次は、心理科学が幸せをどのように定義しているか
(そして、より幸せになるためにそれをいかに活用していくか)を詳しく見ていきたい
と思います。
ただし、これからお話しする中で念頭に置いてほしいのですが、心理学研究の領域では
近ごろ大きな議論が巻き起こっています。「心理学研究の再現性」として知られる
大規模調査が新たに実施され、その結果の全文が学術誌『Science』に掲載されました
。
それによると、心理学研究の再現を試みたところ、もとの研究と同じ結果が得られた
ケースはごくわずかだったというのです。もちろん、この大規模調査は、学習、記憶、
認知に関する研究を中心にしており、幸せに関する研究やポジティブ心理学などの
他分野を対象としたものではありません。とはいえ、研究結果が何を指し示して
いようとも、それは決して不変ではないことを、常に忘れずにいてください。

研究結果が示す、「幸せではない」要素とは

幸せを科学的に定義づけようと試みるのなら(幸せに限ったことではありませんが)、
消去法がベストかもしれません。「幸せではない」ことが何かわかれば、最低でも幸せ
とは何なのかを絞り込めるでしょうから。カリフォルニア大学バークレー校の科学研究
センター「Greater Good Science Center」のサイエンス・ディレクターであるEmilian
a Simon-Thomas博士は、長年にわたって究明されてきた基本原則がいくつかあると
言います。結論から言えば、「幸せではない」要素は、以下の通りです。
個人的な欲求がすべて満たされること
人生に対して常に満足感を抱くこと
いつも喜びを感じていること
ネガティブな感情を一切持たないこと
驚きましたか? もしもそうなら、あなたの持つ幸せの定義は、ほんのちょっとずれて
いたのかもしれません。同大学の科学研究センターが研究を重ねて発見したのは、真の
幸せとは心の平静より大きな「良いこと」に目を向けることだそうです。幸せとは、欲
求を満たし、いつも「良い気分」でいたり、人生のあらゆる面に満足したりすること
ではありません。快楽主義や、喜びや自由の追求は、一時的に幸せをもたらすこと
がわかっていますが、カーネマン博士の研究によると、全般的な幸福感を長く維持
する上では効果がないようです。
幸せをめぐる要素でとりわけ重要なのは、今この瞬間にあなたが感じている
かもしれないネガティブな感情です。ネガティブな感情など存在しないほうが
良いような気がするかもしれませんが、「ネガティブな感情がなければ幸せ」という
わけではありません。
社会心理学の博士研究員であるVanessa Buote氏は『ハーバード・ビジネス・レビュー
』の記事の中で、真の幸せとは幸運も不運も受け入れることだと述べています。
幸せならいつも明るく、喜びに満ちて、満足しており、どんな時でも笑顔でいるだろう
と思われがちですが、それは誤解です。そうではありません。幸せで豊かな人生は、楽
あれば苦ありの日々を受け入れることであり、悪いことを違った視点から見る方法を学
ぶことなのです。
ネガティブな感情にさいなまれながらも、人生に幸せを感じることはできます。
むしろ、そうする方法を身につけるのが、幸せな人間になるために欠かせないのです。

幸せの追求には限界がある

これで、科学が幸せをどう定義しているのかがわかりました。しかし、それでは幸せに
ついて半分しかわかったことになりません。それよりも大事なのは、「自分は幸せにな
れるのか」ということ。簡単に言ってしまえば、答えは「イエス」なのですが、脳内に
ある化学物質のアンバランスを調整するための処方薬をのぞけば、幸せになれる「魔法
の薬」など存在しません。幸せになるには意識的な努力が必要であり、それには制約も
ついてきます。
まず、あなたの幸せの範囲は、おそらく、遺伝的に決められています。カリフォルニア
大学リバーサイド校のSonja Lyubomirsky博士によると、これはつまり、受け継いだ遺
伝子により、現在の、あるいは「慢性的な」幸せレベルが維持されている可能性がある
という意味です。ふさぎ込むことの多い家系に生まれたのであれば、あなたもまたそう
いうタイプかもしれません。さらに、どこまで幸せになれるのかという最大限度も、遺
伝子が決めている可能性があります。基本的に、幸せはあなたの人となりの一部、
あなた自身の一部なのです。Lyubomirsky博士によると、人間の幸福感は生涯にわたっ
て
きわめて一定していることが継続研究からわかっているそうです。というわけで、
みじめな人間を一夜にして世界で1番ハッピーな人間に変身させる術はありません。
次に、幸せになろうと努力するあまり、自分に対していたずらに制限を設けてしまう
可能性があります。カリフォルニア大学サンフランシスコ校のLahnna I. Catalino博士
は、必要以上に幸せを追求するとかえって裏目に出るかもしれないとして、極端な方法
で幸せを得ようとするのはやめるべきだと警鐘を鳴らしています。自分に非現実的な目
標
を課したり、絶えず前向きな気持ちを維持しようとがんばったりしてはいけません。
失敗するのは目に見えていますし、皮肉にも、そのせいで不幸せになってしまう
でしょう。精神科医であり、『F*ck Feelings: One Shrink's Practical Advice for M
anaging 
All Life's Impossible Problems』の共著者でもあるMichael Bennett氏は、幸せを
追求するなら、地に足をつけた姿勢が重要だと指摘しています。
大事なのは、どんなセラピーに従うかではなく、常識的で落ち着いた状態を保つこと
です。どんなセラピーをどれだけ試そうが「このセラピーで自分は到達できるところ
まで行けたのだろうか」と繰り返し自分自身に問いかけることが大切です。
そうすれば、「もっとうまくやれれば」とか「もっと長く続ければ」「もっと良い
セラピストが見つかれば」という思考を堂々巡りせずに済みます。それよりも、
「自分が到達できるところまで行けたのなら、次はどうしたらいいのだろうか」
と考えるべきです。
忘れてならないのは、自分の手には負えない限界があることです。それについて自分を
責めてはいけません。あなたはあなたらしくいるだけなのですから。Catalino博士は、
無理に幸せになろうとするよりも、一瞬一瞬に目を向け、自分に喜びをもたらす活動と
じっくり向き合うようすすめています。幸せになろうとがんばるのはもうおしまい
にしましょう。

幸せいっぱいの人が持つ共通点とは何か

本当のことを言えば、真の幸せと満足感は、1つしかないわけではありません。
幸せとは遺伝的特徴と、気持ちと、性格と、感情と、人生におけるさまざまな
事情や状況が合わさって最高の時を迎えた状態なのです。大きな声では言えませんが、
幸せに関しては研究者たちもいまだ論争の最中であり、それが何なのかはよく
わかっていません。とはいえ、少なくとも幸せが「どんなふうに見えるのか」
は研究からかなり明らかになっています。人によって限界がまちまちとはいえ、
個人的な幸せの限度を最大限に広げるためにできることがあるのです。
具体的には、たっぷり運動をして(内心で目標を定めておくと効果がアップします)、
十分な睡眠をとり、心の知能指数(EQ)を育み、モノではなく経験にお金を費やすこと
から始めてみると良いでしょう。何を目標にすれば良いのかわからないなら、
「PERMA」を覚えておいてください。PERMAは、心理学者でポジティブ心理学の提唱者
であるマーティン・セリグマン氏が編み出し、著者『ポジティブ心理学の挑戦
 "幸福"から"持続的幸福"へ』の中でも紹介されているもので、健康で満足した状態を
示す、5つの主要要素の頭文字を取っています。
Positive Emotion(ポジティブ感情):心の平和、感謝、満足、喜び、創造性、希望、
好奇心、愛情がここに含まれる。
Engagement(エンゲージメント):興味を引きつけられるがあまり、没頭し、「我を忘
れる」ほど打ち込むこと。
Relationships(関係性):他人と有意義かつ前向きな関係を築いている人は、
そうでない人よりも幸せである。
Meaning(人生の意味や仕事の意義、および目的の追求):意味や意義は、私たち
自身よりも大きな大義のために尽くすことから生まれる。信仰であれ、何らかの
かたちで人類の役に立とうという信念であれ、人はみな、人生に意義を
見いださなければならない。
Accomplishment/Achievement(何かを成し遂げること):人生において大きな
満足を得るためには、何らかの方法で自らを高めていく努力をしなければならない。

幸せの科学的な解明は、まだまだ続きます。けれども、これまでの研究から、幸せがた
だ幸運を意味するものではないことが明らかになっています。実際に、手の内のカード
が他人より恵まれない場合もあるでしょう。でも、それでどうプレイするかはあなた次
第です。それどころか、幸せとは、いかにプレイするかということでさえありません。
多くの研究者たちはこう言うのではないでしょうか。どのようなカードであっても、
そのゲームを楽しむ道を見つけることが大事なのだと。

Patrick Allan(原文/訳:遠藤康子/ガリレオ)
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2016年6月4日土曜日

「ただひたすら座禅せよ。道元を知る。」

「ただひたすら座禅せよ。道元を知る。」
道元は、知らなくとも座禅は名前ぐらい知っているでしょうし、結構一日ながらでも
経験している人が多いはず。

道元は、「南無阿弥陀仏」と言う念仏を唱えることで、衆生の
願い(仏の世界への旅立ち)を叶えられるという時代に、
「只管打座ーただひたすら座禅せよ」と唱えた。
そのために、「普勧座禅儀」を書いた。
「座禅は、即ち、大安楽の法門なり。もしこの意を得ば、自然に
四大軽安、精神爽利、正念分明、法味神助け、寂然清楽、日用天真なり。
すでに能く発明せば、謂つべし、竜の水を得るが如く、虎の山によるに
似たりと」と言っている。
道元の思想の根本は、
「修証一如」。
道を探り、悟りを求めて座禅すると言うそのプロセス自体の中に、
既に、悟りがあると言う。「修証一如」、つまり修行することと
悟りを開くことは1つである。
この根底にあるのは、「脚下を照顧せよ」として、普段の生活まで
自身の足元をみることを勧める。
正法眼蔵全95巻の「弁道話」には、
「修証はひとつにあらずとおもえる、すなわち、外道の見なり。
仏法には、修証これ一等なり。いまも証上の修なるゆえに、初心
の弁道すなわち本証の全体なり」
道元の基本的なスタンスは、まずは、既存の考えを否定すること
ではないか、とも思える。
例えば、
涅槃経の 「一切衆生 悉有仏性 如来常住 無有変易」
は、誰にでも、仏になる素質を持っている、と解するが、
道元は、違う。
「一切の衆生、悉有が仏性である」と説く。
一切の生きとし生けるものは、悉有の一部であり、草木草木
虫類に至るまで、そのまま仏性と考えている。
道元が、絶対真理を詠んだ素晴らしい歌がある。
「春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえて すずしかりけり」
春に花が咲く、夏にはほととぎすが来て鳴く、秋には月が美しい、
冬には雪が積もる。ごく当たり前の情景で、何一つ不思議はない。
しかし、その当たり前のこと中に、夫々の現象が夫々の季節に
姿を現していて、それ以外には、季節の現れ方はないと言う
絶対的真理があると言っている。
すなわち、全ての季節を夫々に共通の世界の真実がそこに
現れていて、何一つ変わることはない。そう思えば、心は
非常に涼しいという境地を詠んでいる。
道元は、その92巻で、生死についても言っている。
「生死の中に仏あれば生死なし。また曰く、生死の中に
中に仏なければ生死にまどわず」
生死は、生と死という2つを論じているのではない。
仏教では、生死は、生き死にのあるこの煩悩の現世を言っている。
生死の中には、元々、仏がある。すなわち、絶対的な真実を
掴んでいればすでに、現世を越えている事となり、今更、
生きる死ぬと言うことを迷う必要はない。逆に、生も死も
只それだけの事実で、ことさら悟りや救いがある訳でもない
と観念していれば、生だ死だと騒ぐ必要もない。
そして、
「生より死にうつると心うるは、これあやまり也。
生は、ひと時のくらいにて、すでにさきあり、のちあり。」
生と死は、分けて考えてはいけない。その事実を事実として
徹底的に受け入れること。
先ほどの道元が詠んだ歌の境地でもある。
生きていると言うことは、死と比べて生きているといことではない。
そこには、絶対的な今しかない。
死を迎える心とは、
「生きたらばただこれ生、滅来たらばこれ滅にむかいてつかうべし。
いとうことなかれ、ねがことなかれ」
我々は、既に、生と死の中にいる。それであれば、いまさら、死や
死後の成仏を願うこともない。生の中にいて、生以外のものを
願うことはできないし、死の中にいて死以外のこともありえない。
元々、生きている日々は、最後の死へ近づく日々でもある。
「健康、健康と騒ぎ立てる」が、要するに、生きていることが
本人にとって、一番悪いのかもしれない。
達するべき己の境地とは、
「ただわが身をも心をもはなちわすれて、仏のいえに投げ入れて、
仏のかたよりおこなわれて、これにしたがいもていくとき、
ちからももいれず、こころもついやさずして、生死をはなれ、
仏となる。」
これは、正法眼蔵の、「生死の巻」にある、最大の真髄を
言っている。
全部の自分を捨ててしまう時、本当の真相が露わになり、それが、
人間を向こうから明らかにしてくれる。だから、力んでしまう
ことはない。そのまま生死を離れ、仏となることが出来る。
大事なのは、ただわが身、その心をも、放ちそして忘れること。
生死を分ける戦争のような狂気がない現在、この、「生死の巻」
をキチンと理解することの出来る人は少ない。
しかし、戦争時、これを真剣に、わが身で処した人々は、少なくない。
今回のような病気になっても、わが身では、まだまだ、
不十分。健康な人が生死を意識しないのを、意識するように
なったぐらいかもしれない。
正法眼蔵の、「生死の巻」
「この生死は、すなはち仏の御いのちなり。これをいとひすてんとすれば、
すなはち仏の御いのちをうしなはんとする也。
これにとどまりて生死に著すれば、これも仏の御いのちをうしなふなり。
…いとふことなく、したふことなき、このときはじめて仏のこころにいる。
ただし、心を以てはかることなかれ、ことばを以ていふことなかれ。
ただわが身をも心をもはなちわすれて、仏のいへになげいれて、
仏のかたよりおこなはれて、これにしたがひもてゆくとき、ちからをも
いれず、こころをもつひやさずして、生死をはなれ、仏となる。」
「仏となるに、いとやすきみちあり、もろもろの悪をつくらず、生死に
著するこころなく、一切衆生のために、あはれみふかくして、上をうやまひ
下をあはれみ、よろずをいとふこころなく、ねがふ心なくて、心におもう
ことなく、うれふることなき、これを仏となづく。」
この巻は正法眼蔵九十五巻の中では大変短い巻である。
そしてこれを書かれた年月もはっきりしていない。
しかし、道元の生死に対する見方が、短い巻の中に言い尽くされている。
この巻の書き出しの言葉は「生死のなかに仏あれば生死なし」であり、
これは修証義のはじめの言葉でもある。私たちにとって生死の問題
を究明することは重要で、だれしもこれを避けてはならない問題。
この世に生を受けたるものはいつか必ず死をむかえるのもこれは事実
であり、そして如何に死を迎えるかということが大切である。
それは如何に生きるかということでもある。
正法眼蔵諸悪莫作の巻には「生を明らめ死を明らめるは仏家一大事の
因縁なり」とあり、つまりこれこそが仏教の根本問題である。
「生死の中に仏あれば生死なし」という言葉の中に道元の生死観
が言い尽くされている。この言葉の意味は、生死というのは真理であり、
真理の外に生死はないということである。
ここでいう「中」とは「即」という意味であり、「仏」とは「真理」
という意味であります。ここに引用させていただいた言葉の大意
を現代語に訳して置く。
「この生死は仏の御生命であり、真理であります。これを厭い捨て
ようとすれば、仏の御命を失うことになります。生死の問題に
執着すれば、これも仏の御命を失うことになります。・・・生死を
厭うことも慕うこともなくなればそれは仏の心、つまり真理の世界
にいるのであります。身心を投げ出して生死に執着せず、」
仏の家に我が身心を投げ入れ、仏におまかせし、仏さまに導びかれて
ゆくならば、己は力をも入れず、心をも働かさなくて、それでいて
生死を離れることができ、仏となるのであります。
「仏となるに易しい方法があります。それはいわゆる悪の心を起こし、
悪行を行わず、生死に執着せず、全てのものに対して哀れみをかけ、
上を敬い、下を哀れみ、あらゆるものごとを厭い嫌うことなく、
願い慕うことなく、心に迷い煩うことなく、憂うることのない、
このような人を仏といい、外に仏はないのであります。」
これが現代語訳であり、生き死ぬということ、つまり生滅
ということは大宇宙の動かすことの出来ない真理であり、無常
こそ世の道理である。このことがわかり、而今を全機に
生きるならば「生死なし」である。これは物質的な生死は
人間だれしも避けられないが、それを厭いまた願うという
執着の心を離れ、生が来れば生を、死が来れば死を心静かに
受けるという、仏に任せきりの境地に到るならば、それは
心安らかで、まさに悟りの境地というべき。
「生まれてはつひに死すべきことぞのみ、さだめなき世のさだめ
なりけり」という古歌がある。生も大宇宙の真理、死も
大宇宙の真理、一日一日、今日今時を如何に生きるかということ
が私たちに与えられた永遠のテーマであり、日々仏法僧の
三宝に帰依する生活を送りたいもの。